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ぱんせどフランセ

思いつくまま、たまに仕事のことなども。

福祉の現場に生きる人たちへのインタビューをもとに書いた
ルポルタージュ「日々を織る」も連載しています。
居場所をつむぐ。vol.17|「日々を織る」
0

     

    ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

     

     

    Person 4   鈴木 貴子さん

     

     

    居場所をつむぐ。

     

      居場所のあること

      福祉の道へ 

      キャンプリーダーで鍛えた実践力 

      福祉を職業にすることへの躊躇 

      新聞社での日々 

      再び福祉の道へ、そして1995年1月17日 

      震災からの復興の町で 

      地域福祉の推進 

      もう一度、一個人としての福祉との関わり 

      高齢者福祉の世界へ 

    ⅺ   採用担当者として 

    ⅻ   働く環境を整える 

    xiii  人から人へ、受け入れられる安心

    xiv  人を育てる、職員へのケア  

    xv  尊敬心をもって接する 

    xvi  支援の仕事に見いだす喜びと感動

    xvii 困っている人がいない環境をつむいでいく

     

     

    学生時代に打ち込んだ

    キャンプリーダーの活動で触れた

    障害児達の生き生きとした姿や、

    子ども達の向こう側にいる親御さん達の姿。

    阪神淡路大震災の後の兵庫県で、

    被災した人、一人ひとり訊ね歩き、

    その目で確かめた障害者の困りごと。

    NPO法人の成年後見活動の中で肌で感じている

    地域の高齢者に必要な支援。

    そして自分の父親の病気をきっかけに思った

    それまで懸命に生きてきた高齢者が

    人生の最期の時期をどう過ごすかの大切さ。

     

    多様な人が抱える様々な困りごとに直に接し、

    その人の痛みやしんどさに共感してきた。

    そして、その痛みやしんどさを、

    すこしでも和らげる力になることに

    喜びを見いだしてきた人。

    自分の歩みを記したノートを確かめながら、

    事実とその時の感情を辿るように話す姿に

    そう感じた。

     

    そして今、

    誰も困っている人がいない職場環境づくりが

    採用担当者である自分の仕事だと言う鈴木さん。

     

    職員一人ひとりの困りごとに気づき、

    知るための方法を幾重にも用意し、

    誰もが安定した気もちで利用者の支援に取り組めるよう

    力を尽くしている。

    そして人材育成では、知識や技術だけでなく、

    利用者への優しさや尊敬心を育てたいと

    細やかなケアを続けている。

     

    鈴木さんの話を聞いていると、

    人事の仕事というものは、職場で働く人達への

    福祉そのものではないかと思う。

     

    大切にしているよ、見ているよ、

    見守っているよと、

    職員達にいかに伝えるか。

    ここに居場所があると、職員一人ひとりが

    安心して信じられるように、さりげなく寄り添い続ける。

    その姿勢は、人と人の関係、人と環境との関係を紡ぐ

    法人の福祉に対する姿勢に通じている。

     

    また人事担当として人を育てる一方で、

    法人と地域を繋ぎ、地域の中に

    利用者の居場所を紡ぐ取り組みにも

    積極的に関わってきた。

     

    居場所をつむいでいく中で、

    鈴木さん自身、ボランティアでスタッフの一員として

    参加している法人の地域活動もある。

     

    「学生時代に続けていた書道を活かして

     地域の書道サークルで先生を。

     人様に教えるのだからと、

     あらためて師範の資格を取りました。

     

     “タッピングタッチ”というケアがあるんです。

     ゆっくり、やさしく、ていねいに左右交互に

     タッチすることを基本にしたケアで、

     とても簡単なんですが、不安や緊張、

     痛みやストレス反応を和らげるような効果があって。

     2人で互いに触れ合う基本のタッピングと

     セルフタッピング、ケアタッピングがあって、

     セルフケアも、相手のケアもできるので、

     これは職場や地域でも役立てられるのではないかと

     勉強して、インストラクターの資格を取りました。

     特養のフロアでも何度か、やらせてもらってるのですが、

     これから少しずつ利用者さんや職員、

     地域の方々へも伝えていけたらいいなと。

     

     そういうことを通じて、

     法人の利用者の方の枠にとどまらず、

     いろいろな人が来やすい居場所づくりが

     できたらいいなと思って」

     

    自分が自分らしく、いることを問い続け、

    自分が自分らしく、いられる場所を探し続けてきた。

    人生をそんな風に旅してきたからこそ、

    安心して身を委ねられる居場所を得ることの

    大きさを分かっている人。

     

    「いろいろな方法で皆が繋がっていけたらいいなと。

     いろいろな人が交わることのできる居場所づくりに、

     自分にできることを地域の中で続けている。

     今はそんな感じです」

     

    人材を得て育てる人事担当者として職員の居場所を紡ぎ、

    その職員達と一緒に、地域のお年寄りの居場所を

    地域の中に紡いでいる。

     

    人と人の関係を、人と環境の関係を、

    一本一本の糸をつむいでいくように

    ていねいに結んでいく。

    福祉というのは、そこで暮らす人の普段の生活が、

    何でもないことのように過ぎていくように、

    人々の間を流れる河のようだ。

     

    「困っている人がいない環境をつくることだと思います」

     

    シンプルなこの言葉が、今、強く胸に響いている。

     

     

                                                    <終>

     

                                                               

                次回予定 コラム「職場の中の福祉」

     

     

    協力:社会福祉法人 白寿会

     

    コーディネート協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

     

     

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    hihi wo oru

     

     

    JUGEMテーマ:社会福祉

    | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person4 | 12:21 | comments(0) | trackbacks(0) |
    居場所をつむぐ。vol.16|「日々を織る」
    0

       

      ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

       

       

      Person 4   鈴木 貴子さん

       

       

      居場所をつむぐ。

       

        居場所のあること

        福祉の道へ 

        キャンプリーダーで鍛えた実践力 

        福祉を職業にすることへの躊躇 

        新聞社での日々 

        再び福祉の道へ、そして1995年1月17日 

        震災からの復興の町で 

        地域福祉の推進 

        もう一度、一個人としての福祉との関わり 

        高齢者福祉の世界へ 

      ⅺ   採用担当者として 

      ⅻ   働く環境を整える 

      xiii  人から人へ、受け入れられる安心

      xiv  人を育てる、職員へのケア  

      xv  尊敬心をもって接する 

      xvi  支援の仕事に見いだす喜びと感動

      xvii 困っている人がいない環境をつむいでいく

       

       

      段取りやマニュアルとしての関わり方を越えた

      人と人としての関わり方。

      その中で得られる喜び。

      鈴木さんが伝えようとする意味に触れる

      エピソードを2つ。

       

      最初は、学生時代のボランティア活動での体験。

      ある重度心身障害者福祉施設で

      食事の介助をしていた時のこと。

       

      「タイミングが合って楽しかったんです」

       

      自分が食べ物を運ぶタイミングが、

      相手の噛む、飲み込む、次を待つタイミングと合う。

      急かさず、待たさず、ちょうどいい量を、

      いいタイミングで差し出して、

      口もとを汚さずに、うまく口の中に入れる。

      相手の噛んで、飲み込む様子を見ながら、

      次のひと箸、ひと匙を用意し、

      そろそろ水分かなとコップを手にする。

      もっと言えば、ご飯とおかず。

      この味の次は、どの味がいいかな、

      どうすれば、おいしいかなと考える。

      相手の視線の行く先に次に食べたいものを察する。

       

      言葉が出なかったり、

      コミュニケーションがとりにくい相手であれば、

      そこを思うことも大切だ。

       

      食べ物や飲み物を口に運ぶというシンプルな行為だが、

      ストレスなく食べてもらおう、

      相手に食事を楽しんでもらおうとすれば、

      そこには相手を見て、感じようする気もちが欠かせない。

       

      「うまくいったね」と

      笑顔を交わしながらの食事の介助。

      その時の鈴木さんと当事者の間に流れていただろう

      和やかな空気を想像し、段取りを越えた

      人と人としての関わり方という言葉の意味を思った。

       

      もう一つは、現在勤めている白寿会で

      支援現場の助っ人として

      認知症の方の食事介護に入った時のこと。

      言葉にならない言葉の中で一言だけ、

      はっきりと聞き取れた。

      「ごめんね」という言葉だった。

       

      「その言葉一つで、ご本人の今の気もちが

       垣間見えたような気がしました。

       ごめんね、と口にするような気もちで

       私の介助を受けているんだと。

       その人の口から聞かせてもらって知ることができた

       その人の心の中にある辛さ、

       しんどさに共感できた気がしました」

       

      気もちが通じ合った。

      そう感じてから、介助がしやすくなった。

      呼吸が合ったというのだろうか、

      入れ歯の取り外しという難しい手順まで

      手こずることなくできた。

      一緒になって一つのことをした感じがあった。

       

      「信頼がある人と人との関わり。

       一人の利用者さんと関わる喜び。

       仕事の中で、その喜びを感じることができれば、

       利用者の方に優しく、尊敬心をもって接することが

       自然とできていくと思います」

       

      仕事の中に喜びと感動を見つける。

      それは職員が自分の日々を豊かにする力であり、

      利用者の日々の豊かさに貢献する力だ。

       

       

          次回  xvii 「困っている人がいない環境をつむいでいく」へ

       

       

      協力:社会福祉法人 白寿会

       

      コーディネート協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

       

       

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      JUGEMテーマ:社会福祉

      | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person4 | 09:39 | comments(0) | trackbacks(0) |
      居場所をつむぐ。vol.15|「日々を織る」
      0

         

        ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

         

         

        Person 4   鈴木 貴子さん

         

         

        居場所をつむぐ。

         

          居場所のあること

          福祉の道へ 

          キャンプリーダーで鍛えた実践力 

          福祉を職業にすることへの躊躇 

          新聞社での日々 

          再び福祉の道へ、そして1995年1月17日 

          震災からの復興の町で 

          地域福祉の推進 

          もう一度、一個人としての福祉との関わり 

          高齢者福祉の世界へ 

        ⅺ   採用担当者として 

        ⅻ   働く環境を整える 

        xiii  人から人へ、受け入れられる安心

        xiv  人を育てる、職員へのケア  

        xv  尊敬心をもって接する 

        xvi  支援の仕事に見いだす喜びと感動

        xvii 困っている人がいない環境をつむいでいく

         

         

        「利用者の方に優しく接し、対等に接する人。

         そして人に対して、尊敬心をもって接することができる人。

         この職場に来て、そういう人たちに出会ったんです。

         それが、理想の職員像です」

         

        問いに対する鈴木さんの返答は早かった。

        知識や理解力の大切さはもちろんだが、

        人との関わり方がどうであるかの大きさについて、

        鈴木さんは強く言う。

         

         「高齢者福祉ですから、認知症の方も

         少なからずいらっしゃいます。

         認知症があろうがなかろうが、

         人としての尊厳はかわりません」

         

        認知症になっても安心して暮らせる町づくりの

        一翼を担っているのだという責任と誇り。

        そういうものを、知識やスキルに加えて、

        職員たちの心に育てたいという思いを感じた。

         

        仕事への責任感、誇り、そして優しさ、思いやり。

        いわば職員の人間力を育てることにも

        鈴木さんは力を注いでいる。

         

        その一つが、法人の特養ホームに配属になった

        新卒採用者を対象にした、

        グループ内での1日職場体験の取り組みだ。

         

        白寿会は、特別養護老人ホームを始め、

        有料老人ホーム、ケアハウス、ヘルパーステーション、

        デイサービスセンター、ケアプランセンター、

        地域包括支援センター、相談支援事務所など

        地域に密着した支援サービスを広く展開している。

         

        人というものは、限られた世界で同じ光景ばかりを

        見ていると、どうしても視点が偏ってしまう。

        社会経験の少ない新卒採用者が

        特養ホームの中だけを居場所に育っていけば、

        その経験の内側に視点が偏ってしまっても無理はないだろう。

        だから、特養ホーム以外のグループ内の

        種々様々な職場を経験し、

        外の世界を知り、視野を広げてもらいたいのだ。

         

        「外の世界を知ることで、

         今、自分のしていることの意味と価値を分かってほしい。

         その人の人生全体、家族、そして

         その人の居場所である地域に触れてほしいんです」

         

        外の世界を知ることで職員の世界が広がれば、

        目の前にいる人の世界についての想像の幅も広がる。

        施設の中でのケアという区切られた視野ではなく、

        目の前にいる人の人生、

        その人の向こうにいる家族の、さらに地域の姿に

        想像力を働かせ、自分のしている支援が、

        ひとりの人の、人生の最期の時間にどう関わっているのかに

        心を向けられるようになってもらいたい。

        その思いからの取り組みがもう一つある。

         

        「今年始めた、新しい取り組みなんですが、

         新人研修期間中に、

         法人の地域包括センターが開いている地域カフェに

         特養のご入居者と出かけて一緒に過ごす時間を設けています。

         環境を変えて、利用者さんとじっくり過ごすことで、

         普段とは違う、関わりを経験をしてもらいたいんです」

         

        仕事の中では、まず何をするか、

        義務や責任として、すべきことを覚える。

        そのまま、利用者の支援を段取りとして

        覚えてしまうようなリスクを回避したいのだ。

        業務としての関わりに終わらない、

        人と人としての関わり方を感じてもらいたいのだ。

         

        ルーティーンワークの中では

        ついつい、段取りを考えながらの

        支援になってしまうこともあるだろう。

        たとえば食事の介助をしながら、

        その後の入浴の準備のことを考える。

        仕事がスムーズに流れていくことを最優先すれば

        段取りが重視されるのも当然だ。

         

        だからこそ、環境を変え、

        利用者とじっくりと過ごす時間を経験してもらいたい。

        ただ一緒にお茶を飲み、流れる時間を過ごす中で、

        相手の表情に、声に、仕草に何かを感じる

        ゆとりのある時間の中で、

        利用者さんと、人と人として関わる感覚を、

        知ってもらえたらと鈴木さんは言う。

         

        「福祉系でない学生は、

         ボランティアや実習経験がないことも多いので、

         仕事、業務として関わり方しか経験していない人がいることに

         最近、気づいたんです。

         それだと、仕事の中で、人と関わる本当の喜びを知らずに

         日々の業務に埋もれてしまうかもしれない」

         

        この仕事を選んだからこそ得られる喜び。

        それを日々の仕事の中で感じられる力を身につけてほしい。

         

        利用者と心が通じ合ったと感じる瞬間の嬉しさ、

        その得も言われぬ喜びの感覚を、鈴木さんは知っている。

        “感じる力”が自分に与える豊かさを、

        自分の身をもって経験している。

        だからこそ、職員達の中に感じる力を育てたいと願う。

         

        人と人としての関わりの中で感じる喜び。

        そのエピソードは、聞いているこちらの胸の内にも

        日だまりができたような温かさを感じさせた。

         

               次回 「xvi  支援の仕事に見いだす喜びと感動」へ

         

         

        協力:社会福祉法人 白寿会

         

        コーディネート協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

         

         

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        JUGEMテーマ:社会福祉

        | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person4 | 09:30 | comments(0) | trackbacks(0) |
        居場所をつむぐ。vol.14|「日々を織る」
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          Person 4   鈴木 貴子さん

           

           

          居場所をつむぐ。

           

            居場所のあること

            福祉の道へ 

            キャンプリーダーで鍛えた実践力 

            福祉を職業にすることへの躊躇 

            新聞社での日々 

            再び福祉の道へ、そして1995年1月17日 

            震災からの復興の町で 

            地域福祉の推進 

            もう一度、一個人としての福祉との関わり 

            高齢者福祉の世界へ 

          ⅺ   採用担当者として 

          ⅻ   働く環境を整える 

          xiii  人から人へ、受け入れられる安心

          xiv  人を育てる、職員へのケア  

          xv  尊敬心をもって接する 

          xvi  支援の仕事に見いだす喜びと感動

          xvii 困っている人がいない環境をつむいでいく

           

           

          新卒採用者への研修の充実は既に書いた通りだが、

          有資格者のみから未経験者も受け入れるよう門を広げた

          中途採用者への研修の充実も図っている。

          ケアワーカーとして迎えた中途採用者の研修については、

          テーマ設定、スケジュール等、シフトの中で誰もが

          必要な知識とスキルを身につけることのできるシステムだ。

          新卒採用者、中途採用者、それぞれの状況に応じて

          組まれたシステムは、研修後のケアにまで及ぶ。

           

          受講者は研修のテーマごとに

          学んだことと所感を筆記して提出し、

          講師からコメントを返してもらっている。

          本人にとっては書き記すことで学んだ内容への理解が深まるし、

          ケアする側は、理解の質と深さを分かった上で見守り、

          その後の指導プランを立てられる。

           

          一斉に集中的に研修期間を設けられない

          中途採用者を支えるケアとして、

          新人職員と鈴木さんや研修担当者との

          交換ノートの形での日々の記録と

          コメントのやり取りも行っている。

          細かな気づきや、小さな戸惑いや悩みを

          呟いたり、ふと洩らしたりしやすくなる記録の習慣。

           

          誰も困っている人がいない環境をつくる基本は、

          誰かが困っていることを知ることだ。

          困っていることを分かってくれる人がいる、

          困っていることに耳を傾けてくれる人がいるのだと、

          困っている人に伝え、安心させてあげることだ。

          そのために、記録することで自分の状況を見つめ、

          困っていることを伝えられる機会としての交換ノートがある。

           

          研修中、研修後を通じて、

          新人職員たちへの手厚いケアを心がけてはいるが、

          研修で学んだことが、現場ですぐに活かせる訳ではない。

          何しろ人相手、人に接することそのものが仕事だ。

          現場で実際に様々な状況を経験しながら

          学んだことを身につけ、実践できるようになる。

          その間の新人を支えるために

          プリセプターシップ制度を導入している。

          職場の先輩が指導係としてペアを組み

          現場での仕事を支えていくのだ。

           

          先に挙げた交換ノートで、

          鈴木さんが新人の困りごとを知っておくことは、

          このプリセプター制度で、

          指導するプリセプターへのサポートにもなる。

          2年目から4年目、5年目と

          現場での判断力と実行力がついてきた職員が

          後輩のケアをするプリセプターシップ。

          知識やスキルを教えるだけではなく、

          仕事へのモチベーションを保ち高めるなど

          人を育てることは簡単ではない。

          新人の困りごとを知っておくということは、

          プリセプターの困りごとを推し量り、

          ケアすることに繋がっていく。

           

          「困っている人がいない環境づくり、

           採用した人達が、

           ここ、この法人で働こうと決めてよかったと

           思えるようにサポートしていくまでが

           採用担当の仕事ですから」

           

          職員達が安定した心で支援の仕事に取り組むことが

          法人が提供するサービスの質を高める。

          すべては、法人が提供する支援の質へと繋がっている。

          対人支援の根幹とも言える職員を育成することの責任は大きい。

          その重責を果たすための、職員育成の取り組みには

          心強いパートナーがいる。

           

          「特養のナースで、プリセプター制度は

           もともと彼女がしていた取り組みを

           制度として整えて今の形にしたものです。

           現場に近い看護師の彼女の知識と経験をベースに、

           私の県社協時代の知識と経験、

           現場から一歩下がったマネジメントの客観性を融合させて

           職員たちにとって、よりよい形の育成の方法を

           探って、作って、しています」 

           

          人を育てることで、利用者の日々の暮らしを

          より明るく、豊かにすることを担っている。

          彼女がいてこそと、

          職員育成のパートナーの大切さを話す言葉は、

          人を育てることの大切さを語る言葉に聞こえた。

          鈴木さんが求める理想の職員像について訊ねた。

           

                     次回「 xv 尊敬心をもって接する」へ

           

           

          協力:社会福祉法人 白寿会

           

          コーディネート協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

           

           

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          JUGEMテーマ:社会福祉

          | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person4 | 08:20 | comments(0) | trackbacks(0) |
          居場所をつむぐ。vol.13|「日々を織る」
          0

             

            ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

             

             

            Person 4   鈴木 貴子さん

             

             

            居場所をつむぐ。

             

              居場所のあること

              福祉の道へ 

              キャンプリーダーで鍛えた実践力 

              福祉を職業にすることへの躊躇 

              新聞社での日々 

              再び福祉の道へ、そして1995年1月17日 

              震災からの復興の町で 

              地域福祉の推進 

              もう一度、一個人としての福祉との関わり 

              高齢者福祉の世界へ 

            ⅺ   採用担当者として 

            ⅻ   働く環境を整える 

            xiii  人から人へ、受け入れられる安心

            xiv  人を育てる、職員へのケア  

            xv  尊敬心をもって接する 

            xvi  支援の仕事に見いだす喜びと感動

            xvii 困っている人がいない環境をつむいでいく

             

             

            「人から人へ、だと思うんです」

             

            応募、採用、初日のオリエンテーションを経て、

            新しい職員を現場まで繋ぐのは鈴木さんだ。

            一人ひとりの職員が、よりスムーズに

            環境に馴染み、円滑に仕事をできるように配慮した

            きめ細やかなサポート。

            その基本になるのは、人から人へ繋いでいくことなのだ。

             

            たとえば研修期間が終わり

            それぞれが配属の現場に出る初日。

            新卒採用者のように内定後に

            現場体験のアルバイト期間があれば

            見知った人もいるが、

            中途採用者だと現場はまったく初めての場なので、

            鈴木さんが現場まで同行し

            現場の責任者や担当者と引き合わせる。

             

            「現場に出る初日って、すごく緊張すると思うんです。

            誰も知っている人がいない所に、しかもそれぞれ皆、

            仕事中の所に一人で入って行って。

            だれにどう声をかければいいか戸惑ったり、

            もじもじしたりってあると思うんです」

             

            だから、鈴木さんが一緒に行って、現場に繋ぐ。

            最初の頃は、研修後に配属先を伝えて

            現場に行かせていたのだが、

            ある時はたと、動いている現場に一人で入って行く

            新人の心許なさを思った。

             

            「人から人へ。

            常に誰か、自分の顔を見知っている

            誰かがいてくれるというだけで、

            居場所感があると思うんです」

             

            たしかに、仕事で参加する交流会などでもそうだ。

            初めての場所で、初めて会う人たち。

            見知った顔を見つけると一気に安心し、

            その場に溶け込むきっかけになる。

            見知っている人がいて会釈を交わす。

            それだけで、ずいぶんと心丈夫になる。

             

            受け入れる側も知らない人が戸口に立っているのと、

            そこに鈴木さんがいるのとでは違いがあるだろう。

            知ったものどうしの気安い笑顔が生まれ、

            その笑顔はそのまま鈴木さんの隣にいる

            初対面の人へも振り向けられていく。

             

            「実習生についても同じです。

             受け入れられている感覚って大切ですから」

             

            受け入れられている感覚と居場所感。

            受け入れる側に、受け入れられる側に。

            その両方への細やかな配慮を感じる取り組みの

            いくつかを紹介しようと思う。

             

            1つ目は、職員紹介の掲示板。

            入職した日から1〜2か月ほど、

            その職員の顔写真を添えた紹介カードを

            職員の通り道となる廊下の壁に掲示している。

            部署が違って直接話す機会がなくても、

            顔と名前と所属などを知ることで

            お互いに、ほんの少しは知りあっている。

            そういう下地があると、

            初めてのコミュニケーションも打ち解けやすい。

             

            2つ目は、折に触れて職員を引き合わせること。

            利用者を支援する現場で働く職員にとって

            鈴木さんの机がある法人本部の事務所は

            場違いなというか、所在ないというか、どこか

            馴れない雰囲気の中で居心地の悪さを感じる場所。

            だから鈴木さんは、そこに居合わせた事務所の職員に

            初日の新人を紹介する。

            事務所の中にも知った顔が増えれば、

            心理的な距離が近くなる。

             

            3つ目は、施設全フロアのツアー。

            仕事の場というのは意外と限定されるもので、

            持ち場以外のフロアには馴染みがないものだ。

            その馴染みのない場所に所用ができて訪ねた時、

            アウエー感のようなものを感じる。

            鈴木さんに案内されながら一度歩くだけでも、

            見たこと、訪ねたことのある場所になる。

            人の心とは不思議なもので

            それだけのささやかな経験で、

            足を踏み入れたこともない場所とは違う、

            場との繋がりを感じるものだ。

             

            居場所感を持てるように、人から人へ。

            困っている人がいない環境づくりには

            常に、職員に寄り添う鈴木さんの姿がある。

            そして、それは人を育てる過程にも通じている。

             

                    次回「 x 人を育てる、職員へのケア」へ

             

             

            協力:社会福祉法人 白寿会

             

            コーディネート協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

             

             

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            JUGEMテーマ:社会福祉

            | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person4 | 09:34 | comments(0) | trackbacks(0) |
            居場所をつむぐ。vol.12|「日々を織る」
            0

               

              ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

               

               

              Person 4   鈴木 貴子さん

               

               

              居場所をつむぐ。

               

                居場所のあること

                福祉の道へ 

                キャンプリーダーで鍛えた実践力 

                福祉を職業にすることへの躊躇 

                新聞社での日々 

                再び福祉の道へ、そして1995年1月17日 

                震災からの復興の町で 

                地域福祉の推進 

                もう一度、一個人としての福祉との関わり 

                高齢者福祉の世界へ 

              ⅺ   採用担当者として 

              ⅻ   働く環境を整える 

              xiii  人から人へ、受け入れられる安心

              xiv  人を育てる、職員へのケア  

              xv  尊敬心をもって接する 

              xvi  支援の仕事に見いだす喜びと感動

              xvii 困っている人がいない環境をつむいでいく

               

               

              「新卒採用者では、3年目くらいまでは

               ほとんど離職者はいないです。

               3年目くらいになると

               別の道を探し始める子たちも出てきますけど」

               

              離職率をいかに引き下げるか。

              福祉業界に限らず、人事を担当する人とお話ししていると、

              たいてい口にされる課題だ。

              新卒採用者に限らず、人が続く環境をつくる。

              人を育て、働くモチベーションを保つ。

              福祉の現場を支える裏方の奮闘はいかばかりだろうか。

               

              「困ってる人がいないように、

               働く環境を整えることだと思うんです」

               

              採用担当者としての仕事について、鈴木さんはそう言った。

              困っている人がいないようにする。

              それは、まさしく福祉の仕事だ。

              現場の前線で働く職員が

              利用者の日常生活の困りごとの解決に集中できる

              環境をつくる。

              現場の前線にこそ立ちはしないが、

              裏方として職員を支える人事の仕事もまた、

              福祉の現場に他ならない。

               

              「見ているよ、見守っているよということを

               伝えることだと思います」

               

              困っていることを分かってもらえると、

              当人が安心できる。

              困っている人がいない環境の基本は

              それに尽きるのではないだろうか。

              困っていることを分かってくれている、

              そして解決に力を貸してくれる人がいる。

              たとえ完全な解決策がなかったとしても、

              そういう人が傍にいて、その状況を理解して、

              心に寄り添ってくれていると思えば、

              そこに居続ける励みになる。

               

              新たな場所での暮らしを始めることは、

              人と人との関係、

              個人と環境との関係を紬いでいくこと。

              その関係を一緒に紡いでいくというのが、

              鈴木さんが勤める社会福祉法人「白寿会」の

              支援の姿勢だ。

              そして、その居場所づくりの姿勢は、

              職員達の支援にも通じている。

               

              「研修の中に、 人と人との繋がりの

               きっかけがあるんです」

               

              新人研修について鈴木さんは、そう語る。

              福祉系以外の学生の採用も少なくないため

              新人研修の充実に力を注いでいる。

              ◎社会人としてのマナー

              ◎法人の理解

              ◎福祉の専門職としての基礎知識

              これだけを基礎研修として

              1日8時間×7日間、計56時間。

               

              新たな環境での緊張と期待の中での

              濃密な研修期間中に

              新人同士、同期の繋がりができていく。

               

              「私が採用を担当した初年度の新人が揃って仲が良くて

              月に1度、飲み会や誕生会を開いたりして、

              同期の繋がりを大切にしてくれていました。

              で、その子達が2年目になった時

              1年目の新人達を誘ってくれて。

              それ以来、2年目が1年目を誘うというのが慣例になって、

              同期と先輩後輩…縦横に繋がりの糸が生まれていました」

               

              人と人の関係、人と環境の関係を繋げる糸は

              何本も、幾種類もあっていい。

              そして、その始まりの糸が鈴木さんなのだ。

              軸糸として、彼女がどんな風に一人ひとりの職員の

              居場所を紡いでいるのだろうか。

               

                     次回 「xiii 人から人へ、受け入れられる安心」へ

               

               

              協力:社会福祉法人 白寿会

               

              コーディネート協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

               

               

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              JUGEMテーマ:社会福祉

              | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person4 | 09:12 | comments(0) | trackbacks(0) |
              居場所をつむぐ。vol.11|「日々を織る」
              0

                 

                ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

                 

                 

                Person 4   鈴木 貴子さん

                 

                居場所をつむぐ。

                 

                  居場所のあること

                  福祉の道へ 

                  キャンプリーダーで鍛えた実践力 

                  福祉を職業にすることへの躊躇 

                  新聞社での日々 

                  再び福祉の道へ、そして1995年1月17日 

                  震災からの復興の町で 

                  地域福祉の推進 

                  もう一度、一個人としての福祉との関わり 

                  高齢者福祉の世界へ 

                ⅺ   採用担当者として 

                ⅻ   働く環境を整える 

                xiii  人から人へ、受け入れられる安心

                xiv  人を育てる、職員へのケア  

                xv  尊敬心をもって接する 

                xvi  支援の仕事に見いだす喜びと感動

                xvii 困っている人がいない環境をつむいでいく

                 

                 

                高齢者福祉施設で仕事をすることになった鈴木さん。

                法人本部の“企画主任”と“在宅サービス部主任” 。

                その2つの職務が彼女を待っていた。

                 

                法人の中で新たに立ち上げられたばかりの

                法人本部の主任として任されたのは、

                職員の採用だった。

                特別養護老人ホームの新館を開き、

                40床増やすにあたって人が必要だった。

                 

                鈴木さんが担当になった初年度は、

                福祉系の新卒学生を

                ほぼ希望どおりの人数、採用することができたが、

                次年度は厳しかった。

                すこし極端な言い方かもしれないが、

                福祉施設の商品は人そのものだ。

                人と人との関わりの中で、

                当事者の日々の暮らしの豊かさが生まれる。

                人を得て、育て続けるという、

                鈴木さんの採用担当者としての奮闘が始まった。

                 

                福祉系以外の学生にも対象を広げて大学も回った。

                見学・説明会を企画し、案内のチラシを配布した。

                福祉法人がインターネットの就職ポータルサイトを

                活用するのは珍しかった時期から、

                積極的にインターネットを活用した人材募集にも取り組んだ。

                より広く、より遠くへと

                外に向けての情報発信を積極的に続けながら、

                法人に関心を寄せた人を迎える企画にも力を注いだ。

                 

                よりよく知り、ここで働きたいと思ってもらう。

                そのために、見学・説明会を充実させ、

                現在は、インターシップにも力を入れている。

                ◎1時間程のベーシックなものを週1回

                ◎トップの話も聞けるものを月1〜2回

                ◎オーダーメイドのものを申し込みに応じて

                 オーダーメイドの説明会は、日程はもちろん

                 誰の話を聞きたいか、どんなことをしたいかまで

                  学生の希望に応じる。

                 

                参加希望者の関心と法人への知識の程度に合わせて

                選べるようにして、門を大きくした。

                密度の濃い企画があることで、

                多数の内の一人として参加できる

                定期開催の見学・説明会が垣根の低いものに感じる。

                組織のトップから直接話を聞き、

                自分の先輩や上司になる人に会って、

                ここでどんな風に仕事をしていくのか

                より明確にイメージを描けるようになるまで。

                門を大きく、垣根を低く、

                学生の自主性に応じながら対応を深めていき、

                この法人で働いてみたいという気もちを育てていく。

                 

                ここで働きたいという気もちを育てる。

                鈴木さんの取り組みを聞きながら、

                職員を育てるということは採用の段階、

                いや、もっと前の、

                人材に出会う瞬間から始まっているのだと

                あらためて気づいた。

                 

                そして、新卒採用者たちの離職率は低く、

                短期間で辞めることは、ほとんどない。

                そこには、研修の充実はもちろん、

                働く環境を整えるための細やかな配慮や取り組みがある。

                 

                              次回「ⅻ 働く環境を整える」へ

                 

                 

                協力:社会福祉法人 白寿会

                 

                コーディネート協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

                 

                 

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                JUGEMテーマ:社会福祉

                | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person4 | 08:08 | comments(0) | trackbacks(0) |
                居場所をつむぐ。vol.10|「日々を織る」
                0

                   

                  ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

                   

                   

                  Person 4   鈴木 貴子さん

                   

                  居場所をつむぐ。

                   

                    居場所のあること

                    福祉の道へ 

                    キャンプリーダーで鍛えた実践力 

                    福祉を職業にすることへの躊躇 

                    新聞社での日々 

                    再び福祉の道へ、そして1995年1月17日 

                    震災からの復興の町で 

                    地域福祉の推進 

                    もう一度、一個人としての福祉との関わり 

                    高齢者福祉の世界へ 

                  ⅺ   採用担当者として 

                  ⅻ   働く環境を整える 

                  xiii  人から人へ、受け入れられる安心

                  xiv  人を育てる、職員へのケア  

                  xv  尊敬心をもって接する 

                  xvi  支援の仕事に見いだす喜びと感動

                  xvii 困っている人がいない環境をつむいでいく

                   

                   

                  しばらく仕事を離れ一個人の生活に集中する。

                  そう決めた充電期間にボランティアで参加した

                  NPO法人「西成後見の会」。

                  その法人の副代表理事が、現在、鈴木さんが勤めている

                  社会福祉法人 白寿会の総合施設長だった。

                  法人で地域に向けての新事業を始めるにあたって、

                  新たに担当者が必要となり、鈴木さんに声がかかった。

                   

                  兵庫県の社会福祉協議会での広域な仕事には

                  認知症の方への支援や高齢者福祉も含まれていたので、

                  高齢者施設での仕事への知識と認識はあった。

                  ただ、福祉施設で働くということは、

                  大学を卒業する時に、自分には向いていないと

                  遠ざけたことだった。

                   

                  「それが、何故かあの時は、

                  人生の流れに乗ってもいいかなと、思ったんですよね。

                  自分には珍しく、いろいろ考えないで、

                  流れに飛び込んでもいいかと」

                   

                  小学校から高校まで通っていた、

                  エスカレーター式のミッションスクール。

                  その環境と、それを与えてくれている

                  両親への感謝はあったが、

                  自分にぴったりの居場所だと感じられずにいた。

                  そしてチャンスを待って、そこから飛び出した十代。

                   

                  自分の志望を叶えるチャンスを前に

                  周りの人の気もちを考えて、

                  居場所の選択に迷った新聞社時代。

                   

                  組織が変化していく流れの中で自分も変わっていくのか。

                  そこに居るために自分を変えるのか、

                  自分を信じ続けるために居場所を変えるのか。

                  異なりを受け入れることの難しさを

                  自分の心の中にも見いだし、考え続けた社協時代の最期。

                   

                  自分が自分らしく、いることを問い続け、

                  自分が自分らしく、いられる場所を探し続けてきた。

                  そういう旅を続けてきて出会ったのが、

                  自分には向いていないと考えていた

                  施設という場所での仕事だった。

                   

                  10代、20代の時間の中で感じてきた

                  異なりを受け入れることの難しさ。

                  その経験の中で鈴木さんは、

                  居場所というものは、

                  人と人との間に生まれるものだということも

                  感じたのではないだろうか。

                   

                  そして、特別養護老人ホームの仕事へと

                  鈴木さんの背中を押す出来事があった。

                   

                  「県社協勤めの終わり頃、父が倒れたんです」

                   

                  心臓疾患だった。

                  大学進学と同時に家を離れて10余年。

                  社会経験を積んだ子どもの目に

                  病に倒れた父の姿はどんな風に映っただろう。

                   

                  「これまで真面目に仕事をして、一所懸命

                  生きてきた人が、人生の最期をどう過ごすのかって、

                  とても大切で大変なことだと思いました」

                   

                  高齢者福祉や高齢者施設が、大切だと実感した。

                  燃え尽きたと、仕事を辞めてから1年6か月。

                  高齢者施設で働くことを決めた。

                  鈴木さんが、乗ってもいいかなと思った人生の流れは、

                  時を待って彼女を誘いに来た船のようだと思う。

                   

                                次回「ⅺ 採用担当者として」へ

                   

                   

                  協力:社会福祉法人 白寿会

                   

                  コーディネート協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

                   

                   

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                  JUGEMテーマ:社会福祉

                  | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person4 | 07:33 | comments(0) | trackbacks(0) |
                  居場所をつむぐ。vol.9|「日々を織る」
                  0

                     

                    ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

                     

                     

                    Person 4   鈴木 貴子さん

                     

                    居場所をつむぐ。

                     

                      居場所のあること

                      福祉の道へ 

                      キャンプリーダーで鍛えた実践力 

                      福祉を職業にすることへの躊躇 

                      新聞社での日々 

                      再び福祉の道へ、そして1995年1月17日 

                      震災からの復興の町で 

                      地域福祉の推進 

                      もう一度、一個人としての福祉との関わり 

                      高齢者福祉の世界へ 

                    ⅺ   採用担当者として 

                    ⅻ   働く環境を整える 

                    xiii  人から人へ、受け入れられる安心

                    xiv  人を育てる、職員へのケア  

                    xv  尊敬心をもって接する 

                    xvi  支援の仕事に見いだす喜びと感動

                    xvii 困っている人がいない環境をつむいでいく

                     

                     

                    小さなことでもいい。

                    何か地域社会に変化を起こしたい。

                    ムーブメントのきっかけをつくりたい。

                    震災後、地域の社協の人たちと一緒に歩き回り

                    暮らす人と直接に触れ合った町。

                    机上で設計図を描くだけでなく

                    何か手応えのある実行をしたいと

                    志を共にする仲間と力を一緒に

                    いろいろな試みを続けていた県社協での最期の時期。

                    まるで闘うように仕事をしていた。

                    熱量の大きさが、組織の変化への摩擦の大きさともなり

                    社協を去ることを決めた鈴木さん。

                     

                    「燃え尽きたんだね…と言う周りの声を、

                     その時は受け入れられなかったんですが、

                     今になって振り返ると、

                     まさに、燃え尽きた…という感じでした」

                     

                    大学卒業後、新聞社で仕事に打ち込み、

                    転職した兵庫県の社会福祉協議会では、

                    震災からの復興に挑む町で地域福祉の推進に奔走した。

                    10年余り、仕事に没頭する日々を送ってきた。

                     

                    「すこし、のんびりしたいなと思って。

                    しばらくは、一個人の暮らしをしたいと」

                     

                    料理をしたり、買い物に行ったり、親と過ごしたり。

                    自分の日常生活を味わいたいと思った。

                    他の誰かの暮らしのことばかり考えて、

                    自分自身の日常生活はずっと後回しだった。

                    自分の住まいを整え、食事に手間をかけ、

                    気ままに寄り道しながら買い物に出かける。

                    自分の好きなことだけをする。

                     

                    そんな暮らし方を始めて1か月ほど経った5月。

                    大学時代、ボランティアで打ち込んでいた

                    キャンプリーダーの先輩から、

                    NPO法人の立ち上げの手伝いをしないかと声がかかった。

                     

                    独り暮らしのお年寄りが多く、

                    生活環境が十分ではない人も少なくない

                    大阪の西成という地域で、

                    成年後見制度を活用して人権を擁護しようと、

                    前年に設立、活動していた会で

                    NPO法人として活動を展開していくにあたって、

                    助成金の申請などの実務と、

                    研修の企画や手配など会の活動そのもの手伝いだった。

                     

                    のんびりしようと辞職した仕事の内容と近いが、

                    鈴木さんにとって、それは一個人として、したいことだった。

                     

                    本人の主体性を第一に、その人にとって

                    よりよい暮らしを実現するための対人支援。

                    その人が、その人として生きて、暮らしていることを

                    何より大切に、支援をしていくことの大切さを訴え、

                    実践し続ける先輩からの誘いは、

                    燃え尽きたと感じていた鈴木さんの心を

                    穏やかにケアするものだったのかもしれない。

                    参加から15年を過ぎた今も、鈴木さんは、

                    理事と事務局長として、この活動を続けている。

                    さらに、このNPO法人「西成後見の会」への参加は、

                    鈴木さんのその後のキャリアに大きな影響を与えた。

                     

                                次回 「 高齢者福祉の世界へ」へ

                     

                     

                    協力:社会福祉法人 白寿会

                     

                    コーディネート協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

                     

                     

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                    JUGEMテーマ:社会福祉

                    | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person4 | 16:08 | comments(0) | trackbacks(0) |
                    居場所をつむぐ。vol.8|「日々を織る」
                    0

                       

                      ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

                       

                       

                      Person 4   鈴木 貴子さん

                       

                      居場所をつむぐ。

                       

                        居場所のあること

                        福祉の道へ 

                        キャンプリーダーで鍛えた実践力 

                        福祉を職業にすることへの躊躇 

                        新聞社での日々 

                        再び福祉の道へ、そして1995年1月17日 

                        震災からの復興の町で 

                        地域福祉の推進 

                        もう一度、一個人としての福祉との関わり 

                        高齢者福祉の世界へ 

                      ⅺ   採用担当者として 

                      ⅻ   働く環境を整える 

                      xiii  人から人へ、受け入れられる安心

                      xiv  人を育てる、職員へのケア  

                      xv  尊敬心をもって接する 

                      xvi  支援の仕事に見いだす喜びと感動

                      xvii 困っている人がいない環境をつむいでいく

                       

                       

                       

                      震災後の混乱の中、

                      県社協内の臨時体制は、3月の末まで続いた。

                      4月になり新年度の始まりとともに臨時体制は解消。

                      応援にきていた各府県の社協の職員は

                      徐々にそれぞれの地域に戻っていき、

                      鈴木さんたち兵庫県社協も、

                      各地域の社協や施設をサポートし続けながら

                      自分たちが推進すべき本来の業務を再開した。

                      それは、地域福祉をどう推し進めていくかの

                      中長期計画の方針を打ち出し、

                      その方針にのっとった地域社協の政策を支援すること。

                      震災以前、県社協が続けてきた取り組みの再開と、

                      被災地域社協の支援だった。

                       

                      鈴木さんは福祉部(現在の地域福祉部)で

                      当時、神戸市の他の20市70町12郡あった

                      地域の社会福祉協議会を支援する取り組みに従事した。

                      日々の生活で生きづらさを感じている、

                      そういう人の困りごとを知って、

                      少しずつその具合を良くしていく。

                      地域福祉の推進という、

                      気長にじりじりこつこつと進んでいく他ない

                      長い道程が、震災からの復興の中で始まった。

                       

                      「地域福祉の推進は長い道程です。

                       計画を立て、実行し、評価して、改善する。

                       いわゆるPlan Do Check Actionを、

                       地域のニーズの掘り起こし、分析から行いました。

                       

                       今、地域福祉で必要とされているものは何か、

                       情勢分析しながらビジョンを設定し、

                       各地域で推進中の計画や取り組みを整理して

                       現状把握を行った上で、

                       10数項目取り上げて、

                       それに対する活動の方向性を提案していました。

                       

                       地域それぞれに特性や課題があるので、

                       具体的な取り組みは各地域の自主性で。

                       県社協の福祉部では活動の上のポイントや方向性を

                       提示していました」

                       

                      震災からの復興の中で地域福祉を推進する。

                      障害のある人もない人も

                      誰もが少しでも、普段の生活の中で

                      生きづらさを感じずに暮らせるように

                      環境を整えるための計画を立て、

                      各地域での計画の実行の支援をする。

                       

                      大きな視野に立って最先端のビジョンで方向性をつくり、

                      そこに到達するための具体例や実施例を添えて

                      地域の各社協に提案し、

                      実現に必要な研修の実施と提供も行った。

                      ビジョンを描く県社協と

                      実現に向けて行動する各地域の社協。

                      地域福祉の推進は二人三脚で進んでいった。

                       

                      「地域の社協の皆さんと一緒に活動したことは、

                       後々の大きな力になりました。

                       被災した方を一緒に訪問しながら

                       被災地や被災者支援のことを教えてもらい、

                       その情報をより早く広くと発信していく中で

                       地域の社協の皆さんとの関係が育っていったことが、

                       その後の、私の県社協での仕事を

                       後押ししてくれていたと思います」

                       

                      平穏な状況においても長い道程を

                      行きつ戻りつしながら進んでいく地域福祉の推進を、

                      町が丸ごと崩壊したような大震災の後の兵庫県で行う。

                      オーバーペースでのマラソンのような日々が続いた。

                       

                      7年間、走り続けたところで組織に変化があった。

                      直属の上司が退職し、トップが変わった。

                      職業人としてのキャリアのスタートから

                      ずっと守ってきた仕事への考えと、

                      新しくなった組織の方針とに距離ができたような気がした。

                      その変化に馴染めなかった。

                      納得できない、という引っかかりが

                      胸の奥から消えることがないまま2年が過ぎた。

                       

                      地域福祉の推進に取り組みながら、

                      聾者のスタッフを迎えた部の取り組みを

                      今で言うダイバーシティの事例として広め、

                      ささやかなことでもいいから、

                      現実の社会に何かの変化を起こしたいと

                      冊子の発行をしたりと、

                      机上で計画を練り、提案するだけでなく、

                      何か手応えのあることをしたいともがいていた。

                      それまで自主性を持って打ち込んで来た

                      地域福祉への思いが行き場を失ったようだった。

                       

                      大変な思いをした皆と一緒に

                      様々な取り組みを続けてきた地域への思い入れはあったが、

                      2003年の春、9年弱勤めた社会福祉協議会での

                      仕事に終止符を打った。

                       

                         次回「 もう一度、一個人としての福祉との関わり」へ

                                     ( 次回の更新は、8月23日です)

                       

                       

                      協力:社会福祉法人 白寿会

                       

                      コーディネート協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

                       

                       

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                      JUGEMテーマ:社会福祉

                      | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person4 | 08:03 | comments(0) | trackbacks(0) |
                      居場所をつむぐ。vol.7|「日々を織る」
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                        ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

                         

                         

                         

                        Person 4   鈴木 貴子さん

                         

                        居場所をつむぐ。

                         

                          居場所のあること

                          福祉の道へ 

                          キャンプリーダーで鍛えた実践力 

                          福祉を職業にすることへの躊躇 

                          新聞社での日々 

                          再び福祉の道へ、そして1995年1月17日 

                          震災からの復興の町で 

                          地域福祉の推進 

                          もう一度、一個人としての福祉との関わり 

                          高齢者福祉の世界へ 

                        ⅺ   採用担当者として 

                        ⅻ   働く環境を整える 

                        xiii  人から人へ、受け入れられる安心

                        xiv  人を育てる、職員へのケア  

                        xv  尊敬心をもって接する 

                        xvi  支援の仕事に見いだす喜びと感動

                        xvii 困っている人がいない環境をつむいでいく

                         

                         

                        未曾有の事態にどう対処するか。

                        「部署の壁を越え、職員が一丸になって動きました。

                        普段の仕事に関係なく、皆でともかく、事に当たりました」

                         

                        まず、県の社会福祉協議会の事務所は

                        稼働不可能な状態だったので、

                        JR明石駅から4キロほどの玉津という所にある

                        兵庫県立総合リハビリセンターに仮事務所を置いた。

                        鈴木さんを含む4名がその仮事務所に通い、

                        他の職員は、一週間かけて

                        事務所を仕事ができる状態に整備した。

                         

                        鈴木さんが暮らしていた住居は

                        ライフラインが止まり生活できなかったので、

                        同じく六甲道駅近くに住んでいた事務所の先輩と一緒に、

                        高砂市にある先輩のお姉さんの所にお世話になった。

                        仮事務所に通っていた間は、

                         姫路に住んでいた上司に車で送り迎えをしてもらい、

                         震災から一週間後、県社協の事務所に戻ってからは

                         先輩と一緒に神戸駅まで電車で出て、

                         そこから1時間程歩いて通った。

                        「先輩のお姉さんのお家にお世話になっていた

                         ひと月くらい、そういう生活でした。

                         あの時、皆がそうでしたから。

                         誰もが、ごく当たり前に歩いていました」

                         

                        町が機能を失い、

                        人の暮らしが普段どおりにいかなくなった中、

                        仮事務所で先ず取りかかったのは、

                        兵庫県内各地域の社会福祉協議会の状況を把握し、

                        東京にある全国社会福祉協議会をはじめ

                        他府県の協議会とのネットワークに

                        情報を発信することだった。

                         

                        2月に入り交通網が復旧しはじめると、

                        西宮市の障害者の状況調査が始まった。

                         

                        「安否確認と困り具合を調べるために、

                        当時、許されていた範疇で入手できた

                        役所のデータをもとに訪問調査をすることになりました。

                        ほんとうの困りごとを分からなければ、

                        何をどうしていくのか、計画できないからです。

                        地域の社協や学生ボランディアの協力もありました」

                         

                        県社協で仕事を始めて半年足らず。

                        土地勘もないまま、ともかく指示に従い動いた。

                        重度障害者と高齢者を合わせて

                        状況確認を必要とする人は7000人を越える見込みだった。

                        西宮市を始め、近畿全府県の社協から応援が駆けつけ、

                        兵庫県下の社協と力を合わせて、

                        安否確認と状況把握に歩いた。

                         

                        ボランティア元年という言葉が生まれ、

                        マスメディアが積極的に取り上げる

                        ボランティアの姿などに世の中の注目が集まり、

                        社会福祉協議会の存在意義を軽視する声もあったが、

                        近畿全府県の応援に加えて、

                        日本全国の社協からのサポートを受けて

                        地道な住民活動が続いていた。

                         

                        普段の生活を続けていくのに

                        ほとんどの人が困りごとを抱えた状況で、

                        障害者のそれは、どれほどのものか。

                        支えになる人、住空間、医療など心身へのケアと、

                        取り巻く環境への影響の大きさは想像に難くない。

                         

                        町が復興に動き始める時、その姿が、

                        より多様な人が暮らしやすいものになるように。

                        困っている人の有様をその目で見て、

                        声をその耳で聞いて、計画に反映する。

                         

                        「全国の社協が手を繋いだ時でした。

                         臨時の組織体制で、皆が一丸となって、一刻も早く、

                         必要としている人に必要な支援を届けようと動いていました」

                         

                        注目を浴びたボランティア活動の受け入れや調整など

                        表立って目につかない裏方の仕事も引き受け、

                        ともかくも困っている人を支えようと

                        全国の社協が手を繋ぎ、2月3月と集中して動いた。

                         

                        生活福祉資金の貸付のように当座の生活を支えることと、

                        将来の生活環境を整える準備。

                        町の再生に際して、福祉の仕事に従事していた人達が

                        どれほどの責務を担っていたことだろうと、

                        あらためて思う。

                         

                                       次回「 地域福祉の推進」へ

                         

                         

                        協力:社会福祉法人 白寿会

                         

                        コーディネート協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

                         

                         

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                        JUGEMテーマ:社会福祉

                        | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person4 | 08:43 | comments(0) | trackbacks(0) |
                        居場所をつむぐ。vol.6|「日々を織る」
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                          ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

                           

                           

                          Person 4   鈴木 貴子さん

                           

                          居場所をつむぐ。

                           

                            居場所のあること

                            福祉の道へ 

                            キャンプリーダーで鍛えた実践力 

                            福祉を職業にすることへの躊躇 

                            新聞社での日々 

                            再び福祉の道へ、そして1995年1月17日 

                            震災からの復興の町で 

                            地域福祉の推進 

                            もう一度、一個人としての福祉との関わり 

                            高齢者福祉の世界へ 

                          ⅺ   採用担当者として 

                          ⅻ   働く環境を整える 

                          xiii  人から人へ、受け入れられる安心

                          xiv  人を育てる、職員へのケア  

                          xv  尊敬心をもって接する 

                          xvi  支援の仕事に見いだす喜びと感動

                          xvii 困っている人がいない環境をつむいでいく

                           

                           

                          1994年8月、鈴木さんは兵庫県社会福祉協議会で

                          福祉分野での職業人としてのキャリアをスタートさせた。

                          仕事を始めた年に、社会福祉士の資格も取得した。

                          福祉部(現在の地域福祉部)に配属になり、

                          当時、神戸市の他の20市70町12郡あった

                          地域の社会福祉協議会の支援をしていくことになった。

                           

                          大学時代の4年間、打ち込んだキャンプでの

                          プログラムマネジメント。

                          いろいろな地域を自分の足で歩きながら

                          土地柄の違いというものを肌で感じ、

                          その土地、その人との付き合いをしてきた

                          新聞社でのルートセールス。

                          一度は遠ざかった福祉分野へ戻ろうと決めた

                          鈴木さんの背景には、

                          以前、懸念した経験の不足を補う時間があった。

                           

                          「さあ、やるぞ」と、意気揚揚に

                          地域福祉推進の仕事のスタートを切って半年足らず。

                          1995年1月17日、阪神淡路大震災が起きた。

                           

                          当時、鈴木さんは六甲道駅近くの

                          レディースマンションで暮らしていた。

                          揺れが収まるのを待って廊下に出ると

                          誰の姿も見えなかった。

                          あれほどの衝撃と揺れが起きたというのに、

                          何もなかったかのような静かさ。

                          自分の部屋だけに起こったことなのかなと

                          一瞬思ってしまう程のあまりのことに

                          事態をのみこめずにいると、

                          そろそろと見知った顔が現れた。

                          その何人かで、様子を見ようと外に出た。

                           

                          真冬の夜明け前、停電の町は暗く何も見えなかった。

                          「ともかく駅の方に行ってみようと、皆で歩きました」

                          六甲道駅に着くと、高架になった駅の部分が

                          1階の店舗を圧し潰し、達磨落としのように落ちていた。

                          白み始めた空の下で、その様子を眺めながら、

                          「今日、電車は来ないね」と連れの人達と言葉を交わした。

                          そう言いながら、鈴木さんは、

                          どうやって仕事に行こうかと考えていた。

                           

                           

                          空もずいぶんと明るくなったし、

                          崩れ落ちた駅を前に立ちすくんでいても仕方がないと

                          来た道を引き返し始めた鈴木さんたちの

                          目の前に広がっていたのは息を吞む光景だった。

                          崩れ倒れた建物の間で、火が上がっていた。

                          水もなく、消防車も来られない状況の中、

                          誰もが、ただただ、燃え上がる炎を見つめていた。

                          「あの時のことは、忘れられません」

                          甦る光景の前に立ち尽くすように、

                          鈴木さんの言葉が、少しの間、途切れた。

                           

                          目の前に広がる町の姿同様に、日々の暮らしが

                          突然、燃えて消え、崩れ落ちた人が大勢いる。

                          困っている人がそこにいるのだった。

                          「関東から移り住んで独り身で、身軽に動けましたから。

                          ともかく、動ける人間が動こうと思って」

                          どうやって仕事に行くか、

                          今度は具体的に方法を考え始めた。

                           

                                    次回「 震災からの復興の町で」へ

                           

                           

                          協力:社会福祉法人 白寿会

                           

                          コーディネート協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

                           

                           

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                          hihi wo oru

                           

                           

                          JUGEMテーマ:社会福祉

                          | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person4 | 08:58 | comments(0) | trackbacks(0) |
                          居場所をつむぐ。vol.5|「日々を織る」
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                            ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

                             

                             

                            Person 4   鈴木 貴子さん

                             

                            居場所をつむぐ。

                             

                              居場所のあること

                              福祉の道へ 

                              キャンプリーダーで鍛えた実践力 

                              福祉を職業にすることへの躊躇 

                              新聞社での日々 

                              再び福祉の道へ、そして1995年1月17日 

                              震災からの復興の町で 

                              地域福祉の推進 

                              もう一度、一個人としての福祉との関わり 

                              高齢者福祉の世界へ 

                            ⅺ   採用担当者として 

                            ⅻ   働く環境を整える 

                            xiii  人から人へ、受け入れられる安心

                            xiv  人を育てる、職員へのケア  

                            xv  尊敬心をもって接する 

                            xvi  支援の仕事に見いだす喜びと感動

                            xvii 困っている人がいない環境をつむいでいく

                             

                             

                            政治経済学部ではなく社会福祉学科を選んでの4年間。

                            障害児たちとのキャンプに明け暮れた4年間。

                            「新聞社に入ろうという気もちでの勉強が

                            十分に足りていないながら、

                            地方新聞社に入ることができました」

                            記者志望での入社だったが、新入社員は全員、

                            営業職か内勤業務に配属という社の方針で、

                            鈴木さんも販売局での販売店担当という

                            ルートセールスからのスタートだった。

                             

                            「大手新聞社の販売店さんに

                             自社の新聞を置いてもらっていました。

                             集金にも回りました」

                             

                            気さくな人、気難しい人、やさしい人、

                            取りつく島もない人、

                            じっくり腰を据えての付き合いを好む人。

                             

                            「いろいろな人と出会って、いろいろな経験をしました。」

                             

                            社会の波に揉まれるような2年間が、

                            あっという間に過ぎた。

                            福祉を学び、キャンプで身につけた

                            人と人との関係を築く姿勢がルートセールスの

                            仕事にも通じたのか、営業の成績は悪くなかった。

                             

                            2年目が終わった時、会社の組織が大きく変わった。

                            入社から2年後に希望部署に配属という方針が見直され

                            再度、希望部署を申請することになった。

                             

                            「そこで、私、悩んでしまいまして、

                            第1希望を販売局、第2希望を記者にしたんです。

                            記者を第1希望と書くことに躊躇してしまったんです」

                             

                            入社当時、いや大学進学を考えた高校時代からの

                            記者になりたいという思いに変わりはなかった。

                            しかし、本音を率直に表に出せなかった。

                            約束の2年が済んだからと、

                            他所の部署を第1希望と書くことに気が引けた。

                            それは、今いる場所から出て行くことへの希望を

                            意味するのではないだろうかと。

                             

                            「それまでの2年間を否定したくないと思ったんです」

                             

                            2年間に出会った人達の顔も浮かんだ。

                            たとえば、最初は会ってもくれなかったのに、

                            1年半くらい経った時、突然、囲碁に誘い、

                            見よう見真似で碁石を打つ鈴木さんの相手をしてくれた所長。

                            担当販売店の社員さんたちと一緒に配達区域の家を

                            一軒一軒、購読拡張して回ったり、

                            その努力を評価して、ここ一番の時には協力してくれた

                            いつもは叱られてばかりだった厳しい所長。

                             

                            ルートセールスの中にあった泥臭い人との付き合い。

                            その間に出会ってきた人たちの方を振り返ると、

                            そこを後にする希望を第1番に申請できなかった。

                             

                            それに、記者になりたくて新聞社に入ったと、

                            入社時にその志望動機を伝えてある。

                            第2希望としてでも、記者になりたいという思いを

                            伝えさえすれば大丈夫。

                            2年間がんばって、販売の数字を出してきた。

                            その努力できっと記者になれる、と

                            そんな甘い期待が胸の内にあった。

                             

                            が、現実はそんなに甘くはなかった。

                            営業成績のよい若手社員が配属を希望しているのだ、

                            わざわざそれに逆らってまで

                            販売局から編集局へと異動させるわけもない。

                            身から出た錆とは言え、販売局に残って

                            モチベーションが一気に下がっていった。

                             

                            さらに、そういういきさつの一方で、

                            鈴木さんの内面に変化があった。

                            入社から2年目の終わり頃、

                            希望部署の再申請の時期の少し前頃から、

                            いずれ福祉の道へと、頭の片隅で考え始めていた。

                             

                            幼稚園から高校までミッションスクールに通い、

                            大学ではボランティア活動に打ち込む。

                            恵まれた環境の中で育ち、

                            社会経験も乏しい自分が、果たして、

                            困っている人に血の通った相談援助ができるだろうか。

                            胸に浮かんだ疑問を払拭することができず、

                            選ぶ自信を持てなかった福祉の仕事。

                            その福祉の仕事に就きたいという気もちが、

                            ルートセールスの中でいろいろな人と出会い、

                            世の中を知った中で膨らんできていた。

                             

                            「時間を見つけて、病院の見学とかに行ってました」。

                             

                            就職活動を前にした学生時代には関心が向かなかった

                            病院での医療ソーシャルワーカーの仕事にも興味が出てきた。

                            世間に出て経験を広げる中で、

                            鈴木さんの福祉の世界の範疇も広がっていた。

                             

                            入社して3年目の夏、鈴木さんは新聞社を辞めて

                            福祉の世界で働き始めた。

                             

                             

                             次回「 ふたたび福祉の道へ、そして1995年1月17日」へ

                             

                             

                             

                            協力:社会福祉法人 白寿会

                             

                            コーディネート協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

                             

                             

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                            hihi wo oru

                             

                             

                            JUGEMテーマ:社会福祉

                            | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person4 | 06:22 | comments(0) | trackbacks(0) |
                            居場所をつむぐ。vol.4|「日々を織る」
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                              ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

                               

                               

                              Person 4   鈴木 貴子さん

                               

                              居場所をつむぐ。

                               

                                居場所のあること

                                福祉の道へ 

                                キャンプリーダーで鍛えた実践力 

                                福祉を職業にすることへの躊躇 

                                新聞社での日々 

                                再び福祉の道へ、そして1995年1月17日 

                                震災からの復興の町で 

                                地域福祉の推進 

                                もう一度、一個人としての福祉との関わり 

                                高齢者福祉の世界へ 

                              ⅺ   採用担当者として 

                              ⅻ   働く環境を整える 

                              xiii  人から人へ、受け入れられる安心

                              xiv  人を育てる、職員へのケア  

                              xv  尊敬心をもって接する 

                              xvi  支援の仕事に見いだす喜びと感動

                              xvii 困っている人がいない環境をつむいでいく

                               

                               

                              社会福祉か政治経済か。

                              希望していた両学部に合格し、

                              社会福祉学科への進学を決めた鈴木さん。

                              いざ、卒業を前にした時、

                              就職活動は新聞社のみと決めた。

                               

                              当時、社会福祉学専攻の鈴木さんの

                              就職先として待っていた分野は、

                              行政か、福祉施設か、病院だった。

                              行政と病院へは、関心が向かなかった。

                              福祉の道に進むなら福祉施設だった。

                              ただ、その時の鈴木さんには

                              施設で直接支援の仕事に就く自信がなかった。

                               

                              「3年生の時、キャンプと実習で失敗をして、

                               直接支援で人と関わっていく中で起こるだろう

                               いろいろなことを受けとめ、飲み込んでいくには、

                               自分の心は弱いと思ったんです」

                               

                              まず春のキャンプでのことだった。

                              重度知的障害で癲癇(てんかん)発作のある子どもを

                              グループカウンセラーとして担当していた。

                              キャンプからの帰りに、

                              バスが立ち寄ったサービスエリアで、

                              鈴木さんが担当していた子どもが

                              抑制が効かなくなった。

                              「もうなす術がなくて」

                              主催組織の職員の力を借りてなんとかその場が収まった。

                               

                              顔合わせ会の時に、アザができるくらい

                              勢いよく噛まれていたので

                              コミュニケーションにかなりの根気と注意を注いで

                              一緒に過ごしてきたつもりだったが、

                              人が行き交う賑やかな場所で落ち着きを失くした

                              その子を前になす術がなかった。

                               

                              「キャンプで一緒に過ごしていた数日間、

                               私はいったい何をしていたんだろうと泣けてきて」

                              直接支援の難しさをしたたか思い知らされた。

                              「情けなさというか、ふがいなさというか、

                               力のなさというか。

                               そういうものに圧しつぶされた感じでした」

                               

                               

                              その体験に追い打ちをかける出来事が起こった。

                              春のキャンプから半年も経たない8月半ば、

                              社会福祉士実習の実習先に選んだ

                              自閉症の人が生活する施設でのことだった。

                              作業時間中に利用者の一人がパニックになり

                              鈴木さんを叩くか押すかした。

                              「わたし、泣いてしまって、

                               1時間くらい実習の場に戻れなかったんです。

                               自分の弱さが情けなくて…」

                              鈴木さんは、直接支援への自信を喪失した。

                               

                              立て続けに起こったこの2つの事件。

                              事件と言うと大袈裟に聞こえるかもしれないが、

                              鈴木さんにとってはまさしく事件だった。

                              キャンプと実習、

                              どちらの当事者にも対応できなかった。

                              どうしたらいいか分からず、

                              それを受けとめることができなかった。

                              受けとめることができず、

                              なす術なく立ちすくんだり泣いたりする自分に

                              ショックを受けた。

                               

                              この経験は、後々まで鈴木さんの心に影響を与え、

                              大学卒業後の進路を考えた時、

                              当事者と直接関わり支援していく仕事は

                              自分には向いていないのではないかと

                              感じるようになった。

                              直接支援を仕事にするには自分は心が弱い。

                              さらに自問自答が続いた。

                              もし社会福祉士として相談援助の仕事につくとして、

                              「こんな若ぞうの自分がいきなり

                               人の人生の相談にのるなんて」と思い始めたのだった。

                               

                              小学校から高校まで

                              エスカレート式のミッションスクールに通い、

                              大学時代は勉強とボランティア活動に打ち込んだ。

                              恵まれた生い立ちと言える自分が、

                              社会での生活の経験もないままに、

                              困っている人の心や境遇について

                              ほんとうに想像力を働かせ、共感し、

                              役立つことができるのだろうかという疑問が、

                              真摯に考えれば考えるほど膨らんだ。

                               

                              そしてそんな疑問と一緒に、もう一つ、

                              福祉施設で働くということへの違和感があった。

                               

                              「4年間、打ち込んできたキャンプは

                              ボランティアだったんですよね。

                              そのボランティアでしていたことが

                              今度は仕事になるということに、

                              すごく抵抗があって」

                               

                              当時は、福祉施設と地域との間に、

                              今よりももっと、隔たりがあった。

                              施設に入れば施設の中で暮らしていくという

                              考えが今よりも強かった。

                              地域から施設へと居場所を変えた人たちが

                              生活をしている場。

                               

                              「どうしてそう思ったのか、

                              どう言い表わすことができるのか、

                              まだ分からないんですが、

                              そういう、生活の場に入っていくことが

                              ぴったり来なかった、あの時の自分には」

                               

                              鈴木さんがボランティアで打ち込んでいた

                              キャンプは、障害児たちが、家庭や施設など、

                              ともすれば閉じこもりがちな場所から、

                              外の世界へと広がった場所だった。

                              日常の生活から踏み出した非日常の場所で、

                              人と出会い、新たな経験に出会い、

                              それぞれの子どもが

                              自分の可能性に気づいたり広げたりする場所だった。

                              その開かれた場所で出会い接してきた人たちと、

                              その反対側の場所で接していく。

                              施設で働くということが、

                              その時の鈴木さんの心には

                              そんな風に映ったのではないだろうか。

                               

                              「学んできたことと思いが結びつかなかった…というか」

                               

                              なぜ、あの時の自分が

                              福祉の世界に入ることを躊躇したのか。

                              自分の心を覗き込み、探るように

                              鈴木さんは言葉を続けた。

                               

                              「4年間の学びと結びついて、

                              自分にできる仕事の分野は相談援助職。

                              困っている人の相談にのったり、世話をしたり。

                              でも、そういうことを自分ができるんだろうかと疑問でした」

                               

                              直接支援にも、相談業務にも、

                              積極的に関わっていくだけの自信を持てず、

                              しかも違和感を感じている。

                              福祉の道は鬱蒼とした茂みの向こうに

                              隠れてしまったようだった。

                               

                              鈴木さんはもう一つの希望だった

                              新聞記者への道に進むことに決めた。

                               

                               

                                                  次回 「 新聞社での日々」へ

                               

                               

                              協力:社会福祉法人 白寿会

                               

                              コーディネート協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

                               

                               

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                              JUGEMテーマ:社会福祉

                              | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person4 | 07:40 | comments(0) | trackbacks(0) |
                              居場所をつむぐ。vol.3|「日々を織る」
                              0

                                 

                                ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

                                 

                                 

                                Person 4   鈴木 貴子さん

                                 

                                居場所をつむぐ。

                                 

                                  居場所のあること

                                  福祉の道へ 

                                  キャンプリーダーで鍛えた実践力 

                                  福祉を職業にすることへの躊躇 

                                  新聞社での日々 

                                  再び福祉の道へ、そして1995年1月17日 

                                  震災からの復興の町で 

                                  地域福祉の推進 

                                  もう一度、一個人としての福祉との関わり 

                                  高齢者福祉の世界へ 

                                ⅺ   採用担当者として 

                                ⅻ   働く環境を整える 

                                xiii  人から人へ、受け入れられる安心

                                xiv  人を育てる、職員へのケア  

                                xv  尊敬心をもって接する 

                                xvi  支援の仕事に見いだす喜びと感動

                                xvii 困っている人がいない環境をつむいでいく

                                 

                                 

                                京都には、福祉教育課程を設ける大学が多く、

                                キャンプリーダーには、

                                いくつもの大学の1年生から4年生までと

                                所属も年齢も異なる学生たちが参加していた。

                                週2回の研修でコミュニケーションを図り、

                                リーダー同士の信頼関係を育て、

                                一人ひとりの知識やスキルを向上させた。

                                 

                                毎年、7月になると

                                子ども達を迎え入れる準備のために

                                京丹後市の久僧(きゅうそ)海水浴場近くにあった

                                キャンプ施設に大学生たちが集まった。

                                宿泊施設の清掃、

                                ビーチの側にテント村を設営など、

                                子ども達が安全に清潔に過ごせるように

                                環境を整えるところからリーダーたちの責任だった。

                                キャンプの間、参加した子どもたちが頼りにするのは

                                キャンプリーダーである大学生たち。

                                子どもたちにとって、彼ら学生たちが、信頼する大人なのだ。

                                 

                                ◎小学生や中高生の障害児を

                                  マンツーマンに近い形で預かるキャンプ。

                                ◎障害のない子5〜6人に

                                  障害のある子2〜3人が一緒になっての統合キャンプ。

                                 これは、夏の4泊5日をスタートに、

                                 秋1泊、冬2泊、春3泊と年間を通じて、

                                 子どももリーダーも同じメンバーで行う。

                                ◎障害のない子が8泊9日をテントで過ごすキャンプ。

                                 

                                多様な企画で、キャンプは春夏秋冬、

                                年間を通じて行われた。

                                年齢、人数や期間など企画の規模、

                                障害の有無も含めたグループの特徴、

                                季節ごとの環境の変化。

                                主宰組織の職員が見守る中、

                                多様なキャンプの企画、運営、事例研究、

                                実践のフィードバックと

                                多くのことが学生たちに任されていた。

                                 

                                プロジェクトのマネジメント。

                                キャンプのプログラム。

                                食事を賄うフードチーム。

                                海での活動プランに特化したアクアティック。

                                安全円滑にキャンプを行うためにチームを組み、

                                ディレクターも大学生が務めた。

                                 

                                キャンプは事前の参加者顔合わせ会から始まった。

                                キャンプリーダーを務める学生、

                                キャンプに参加する子どもと、

                                本番と同じメンバーが集まり半日ほどを過ごした。

                                障害のある子どもの親にも同行してもらい

                                普段の様子、普段との違いなどの話も聞いた。

                                 

                                この親とのコミュニケーションは重要だった。

                                障害のある子どもの保護者にとって、

                                自分の目や手の届かない所で子どもが

                                泊まりがけで過ごす、

                                しかも若い学生たちに委ねた海辺でのキャンプとあっては、

                                心配や不安を感じるものだろう。

                                小学生の小さな子など、

                                親と離れて寝泊まりすること自体が、

                                親子両方にとって始めての経験ということもあった。

                                参加させてみたいという気もちの一方で、

                                ほんとうに大丈夫だろうかと案じて当たり前だ。

                                 

                                キャンプリーダーである学生たちは

                                お互いの心配を緩和するために、

                                自分たちが担当する子どもの家庭を

                                事前に訪問をすることもあった。

                                子どものことを深く知っている、

                                知ろうと務める姿が信頼関係を育てた。

                                 

                                申し込んでからキャンプ当日までの

                                子どものワクワクする気もち、

                                その子どもの様子を見守る親御さんの気もち。

                                心配がゼロになることは難しいだろうが、

                                任せても大丈夫だと信頼して預けること、

                                そして何より、

                                子どもの楽しそうな姿を見て知っているということが、

                                送り出す親御さんの心をどれほど穏やかにするだろうか。

                                 

                                キャンプについて、ごく簡単に話を聞いただけで、

                                大学生が自分たちの力だけで

                                それだけのことをするのかと、その企画力、実行力、

                                そして人の心のケアまで思慮する細やかさに感じ入った。

                                高校生だった鈴木さんが、

                                『ダウン症の子をもって』という本の中で

                                大学生が障害児たちを登山に連れて行く話を読み、

                                大学生になると、こんなに凄いことができるんだと

                                感心したのも頷ける。

                                 

                                キャンプリーダーの中で、

                                プログラムディレクターの責を担っていた鈴木さん。

                                勉強そっちのけのキャンプ漬けだったと

                                大学時代を振り返って笑うが、

                                その4年間は、書で知識を得、野で実習する、

                                福祉の学びに没頭した日々だったと

                                言えるのではないだろうか。

                                 

                                 

                                               次回 「 福祉を職業にすることへの躊躇」へ

                                 

                                 

                                協力:社会福祉法人 白寿会

                                 

                                コーディネート協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

                                 

                                 

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                                hihi wo oru

                                 

                                 

                                JUGEMテーマ:社会福祉

                                 

                                 

                                | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person4 | 08:45 | comments(0) | trackbacks(0) |
                                居場所をつむぐ。vol.2|「日々を織る」
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                                  ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

                                   

                                   

                                  Person 4   鈴木 貴子さん

                                   

                                  居場所をつむぐ。

                                   

                                    居場所のあること

                                    福祉の道へ 

                                    キャンプリーダーで鍛えた実践力 

                                    福祉を職業にすることへの躊躇 

                                    新聞社での日々 

                                    再び福祉の道へ、そして1995年1月17日 

                                    震災からの復興の町で 

                                    地域福祉の推進 

                                    もう一度、一個人としての福祉との関わり 

                                    高齢者福祉の世界へ 

                                  ⅺ   採用担当者として 

                                  ⅻ   働く環境を整える 

                                  xiii  人から人へ、受け入れられる安心

                                  xiv  人を育てる、職員へのケア  

                                  xv  尊敬心をもって接する 

                                  xvi  支援の仕事に見いだす喜びと感動

                                  xvii 困っている人がいない環境をつむいでいく

                                   

                                   

                                  進路を考えた高校生の時、

                                  鈴木さんには2つの希望の道があった。

                                  福祉の仕事か、新聞記者か。

                                  関東で生まれ育った彼女が合格した大学は、

                                  関東で1校、関西で1校。

                                  明治学院大学法学部政治学科と

                                  同志社大学文学部社会学科社会福祉学専攻。

                                  そして、関西で社会福祉を学ぶことを選んだ。

                                  東京の大学へ進学せず、京都に移り住んでまで

                                  社会福祉を学ぼうと決めた動機は何か。

                                   

                                  鈴木さんは、幼稚園から高校まで

                                  ミッションスクールに通っていた。

                                  「クリスチャンの家庭ではなかったんですが、

                                  小学校からそのままエスカレート式で高校まで、

                                  親が選んだ学校に通っていました」

                                  シスターのいるカトリック系の学校という

                                  物心のついた頃から思春期までを過ごした教育環境は、

                                  鈴木さんの中に、社会貢献、とりわけ弱い人のために

                                  尽くすという心のあり方を育てた。

                                   

                                  そして心の土壌が育った高校生の時

                                  たまたま出会った本の中で、

                                  経済学者で専修大学で教鞭をふるい

                                  後に名誉教授となった正村公宏氏の著書

                                  「ダウン症の子をもって」に出会った。

                                  著者自身が、父としてダウン症の息子と

                                  過ごした日々を綴ったその手記に影響を受け、

                                  福祉の道に進みたいと思った。

                                   

                                  実はこの選択にはもう一つの動機があった。

                                  恵まれた環境にあった鈴木さんだが、

                                  胸の内には、実家を離れ、

                                  そこから飛びだしたいという思いが膨らんでいた。

                                  何故かについては、また後の話として、

                                  進みたいと希望する道が新天地で待っていたのだ。

                                  迷うことなく、同志社大学へ進んだ。

                                   

                                  さて、夢叶えての新天地での大学生活。

                                  鈴木さんが打ち込んだのは“キャンプ”だった。

                                   

                                  福祉の道に進もうと影響を受けた

                                  「ダウン症の子をもって」の中に、

                                  著者の、ダウン症の息子さんが、

                                  大学生のお兄さんお姉さんたちと一緒に山に行き、

                                  登山をするという話があった。

                                  「へえ、大学生になったら

                                  こんな、すごいことができるんだ」と、

                                  その話が、強く印象に残っていた。

                                   

                                  そして同志社大学の入学式後のオリエンテーションで、

                                  京都障害児福祉協会が主宰していた

                                  キャンプのキャンプリーダー募集の紹介があった。

                                  大学生の自分が、障害のある子たちと一緒に

                                  海でキャンプをするというその話は、

                                  鈴木さんの心に刺さった。

                                   

                                  キャンプリーダーとなり、

                                  京都にある各大学からの参加学生の一員として

                                  週2回、研修やボランティア活動に参加し、

                                  夏休み中は、京丹後市にある

                                  久僧(きゅうそ)海水浴場近くにあった施設で

                                  キャンプに参加した。

                                   

                                  「大学時代は、勉強するよりもキャンプをしてましたね」と

                                  当時を振り返り、鈴木さんは笑った。

                                  記憶を辿りながら、一つひとつ確かめるように話す表情は、

                                  堰を切って溢れる思い出への懐かしさ、

                                  そして、今まさにその場にいるように楽しそうなものへと

                                  変わっていった。

                                   

                                  鈴木さんが、学校生活以外のほとんどすべてを

                                  費やしたと言ってもいいほど夢中になった、

                                  障害児とともに過ごすキャンプ。

                                  それは、鈴木さんが高校時代に本で知り、

                                  「大学生になったら、

                                  こんな凄いことができるんだ」と感心したというのも、

                                  もっともだと思うものだった。

                                   

                                   

                                                 次回「 キャンプリーダーで鍛えた実践力」へ

                                   

                                   

                                   

                                  協力:社会福祉法人 白寿会

                                   

                                  コーディネート協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

                                   

                                   

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                                  JUGEMテーマ:社会福祉

                                  | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person4 | 07:44 | comments(0) | trackbacks(0) |
                                  居場所をつむぐ vol.1|「日々を織る」
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                                    ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

                                     

                                     

                                    Person 4   鈴木 貴子さん

                                     

                                    居場所をつむぐ。

                                     

                                      居場所のあること

                                      福祉の道へ 

                                      キャンプリーダーで鍛えた実践力 

                                      福祉を職業にすることへの躊躇 

                                      新聞社での日々 

                                      再び福祉の道へ、そして1995年1月17日 

                                      震災からの復興の町で 

                                      地域福祉の推進 

                                      もう一度、一個人としての福祉との関わり 

                                      高齢者福祉の世界へ 

                                    ⅺ   採用担当者として 

                                    ⅻ   働く環境を整える 

                                    xiii  人から人へ、受け入れられる安心

                                    xiv  人を育てる、職員へのケア  

                                    xv  尊敬心をもって接する 

                                    xvi  支援の仕事に見いだす喜びと感動

                                    xvii 困っている人がいない環境をつむいでいく

                                     

                                     

                                    自分が自分らしく、いることを問い続け、

                                    自分が自分らしく、いられる場所を探し続けてきた。

                                    人生を旅にたとえるなら、そういう旅をしてきた人。

                                    そして、その旅の中で知り、味わった

                                    安心して身を委ねられる居場所を得ることの

                                    大変さ、大きさを、

                                    他の人の痛みや、しんどさを思いやる心に変えた人。

                                    インタビューを終え、

                                    取材ノートを読み返しながら

                                    感じたり考えたりを繰り返す中で、

                                    どんどんと、そんな輪郭線が濃くなってきた。

                                     

                                    今回、お話を伺ったのは、

                                    鈴木貴子さん。

                                    特別養護老人ホームを中心に、

                                    地域で暮らすお年寄りや

                                    障害のある人の暮らしを多角的に支援する

                                    「社会福祉法人 白寿会」の法人本部で、

                                    企画推進や職員採用の仕事に就いている。

                                     

                                    福祉の現場と言えば、先ず、

                                    当事者と直接接するスタッフの姿が思い浮かぶが、

                                    そのスタッフをサポートしたり、

                                    事業推進のための環境を整えたりすることで、

                                    利用者を支援するのもまた福祉の現場だ。

                                     

                                    どんな人から、どんな支援を受けるのかが、

                                    毎日の生活の質と密接に結びつく。

                                    その日々の暮らしの質が

                                    その人の人生の質に大きく影響する。

                                    食事、入浴、排泄、散歩、余暇の過ごし方と、

                                    人の生活に寄り添い支える職員を

                                    育て、サポートしていくことは、

                                    間接的に利用者の生活の質に大きく関わる。

                                     

                                    『地域の中で、一人でも多くの

                                     お年寄りや障害のある人が、

                                     自分がどのように暮らしたいかという気もちを

                                     よりたくさん叶えながら

                                     自立して暮らしていけるように、

                                     創意工夫をこらして

                                     必要に応じた様々な支援を続けていく。』

                                     

                                    法人が掲げるその思いを実現するために、

                                    求人、職員教育、職場環境の向上、事業推進と

                                    裏方として日々、力を尽くす鈴木さん。

                                    その取り組みの根っこには、

                                    「これまで一生懸命生きてきた人が

                                    人生の最期の時間をどう過ごすのかって、

                                    とても大切で大変なことだと思う」と、

                                    人を敬い、思いやる心を感じた。

                                     

                                    鈴木さんが現在勤めている高齢者福祉の法人で

                                    仕事を始めたのは2004年の秋。

                                    新たな場所での暮らしを始めるお年寄りが

                                    一日も早く新しい生活に馴染めるように、

                                    人と人との関係や環境との関係を、

                                    本人と一緒になって紬いでいく、という

                                    法人のコンセプトを、

                                    利用者たちへの支援だけでなく、

                                    職員のサポートにおいても実行している。

                                    鈴木さんの人事における姿勢を伺いながらそう感じた。

                                    そして、その姿勢を育んだのは

                                    彼女がそれまで歩んできた

                                    紆余曲折の道程だったのではないかと思う。

                                     

                                    人と人の関わりを紬ぐ場所。

                                    そこで、どんな風に

                                    人を敬い、思いやり、大切にしているのか。

                                    先ず、福祉の仕事を選んだ理由に始まって

                                    彼女が歩んできた紆余曲折の道程の話から始めよう。

                                     

                                             

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                                    協力:社会福祉法人 白寿会

                                     

                                    コーディネート協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

                                     

                                     

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                                    hihi wo oru

                                     

                                     

                                    JUGEMテーマ:社会福祉

                                     

                                    | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person4 | 07:52 | comments(0) | trackbacks(0) |