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ぱんせどフランセ

思いつくまま、たまに仕事のことなども。

福祉の現場に生きる人たちへのインタビューをもとに書いた
ルポルタージュ「日々を織る」も連載しています。
繋がるために。Vol9|「日々を織る」
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    ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

     

    Person 1  坪井絵理子さん

     

    繋がるために。

     

    顱^貎佑凌佑板垢密に関わっていく。

    自分の常識は、自分の思い込み。

    辞めたいと思った時が、ほんとうのスタートラインだった。

    名前を覚えてもらうことから始めたリレーションシップ。

    至れり尽くせりは自立の妨げ 1/2

    至れり尽くせりは自立の妨げ 2/2

    外海に出る経験 1/2

    外海に出る経験 2/2

    地域と繋げる。

     

     

    ワンツースリー音楽団の活動など、

    坪井さんの勤める施設では、利用者が地域に出て

    人の中で色々な体験ができるよう

    様々な取り組みをしている。

     

    一人でも多くの利用者に、地域の中で自活してもらいたい。

    それが施設の基本的な考えであり、原則だ。

    施設内にある自活エリアや、

    地域に用意したグループホームを経て、

    自活へのステップを進んだ人は、施設から独り立ちする。

     

    「施設の玄関を出ていく背中を見送る時が、いちばん嬉しい」

    後ろ姿を見送る時に淋しさはないかと尋ねたら、

    「自活がうまくいくようにという願いでいっぱいで、

    淋しいとか思うことはないです」

    という返事が、迷いなく返ってきた。

     

    「でも」と、坪井さんの眼差しが強くなった。

    「そこから、うまくいく人ばかりではないんです」

     

    一人暮らしを始めてから、心や体の調子を狂わせて

    病院に入ったり、別の施設に入ったりすることがあるという。

    いったん施設を出れば、その人はもう施設の利用者ではない。

    すなわち、施設で支援を受ける人ではない。

    地域での生活にうまく馴染むことができず、

    自活に支障が生じた時、支援を行うのは地域の担当者だ。

     

    「どこかの施設や病院に入ったという知らせを

     受け取った時には、ほんとうにやるせない気もちになります」

     

    できることに歯止めをかける

    “仕事の範疇“という囲いには

    コンプライアンスの側面もあって、

    もどかしさを受け容れるほかないのだろう。

    けど、起きる、寝る、三度の食事をとるという

    基本的な生活習慣を身につけることに始まって、

    自分の意思を伝えるところまで、

    利用者が一歩一歩進んだ自活への道を

    伴走者のように歩んできた坪井さんにとって、

    そのやるせなさは、どれほどだろう。

     

    「でも、無力感に浸っていても何も変わりませんから。

     せめても、自分にできることはないか、

     何ができるかと考えたら、

     それは、地域と繋がることなんです。

     利用者ではなくなった人にできることはないんですが、

     でも、施設ではどんな風だったかとか、

     調子が悪い時には、こういう風にするとよかったとか、

     何か、役に立つ情報をお渡しすることくらいはできると思うんです」

     

    胸を痛め、感傷に浸っていても何も始まらない、

    自分にできることをやろう。

    そう気もちを切り替え、行動に移すまでに、

    坪井さんは、何度、つらい知らせを受け取ってきたのだろうか。

     

    「そのために、地域の施設を訪ねています。

     大きな施設、小さな施設と、地域に施設を見つけたら

     できる限り訪ねていって、お話しして、繋がります。

     それから、地域の支援員、ボランティアの方も含めて、

     地域で障がい者の支援に携わっている方に

     できる限りお会いする機会をつくって、

     細かく、細かく繋いで、ネットワークを育てています。

     そうしておけば、何かがあった時、

     そうだ、あそこに連絡しておこうと思い出してもらえると思うんです。

     それが、利用者さんが施設を出た後も、 

     今の自分にできる精一杯の支援だと思っています」

     

    施設を出て、一人暮らしを始めて、

    もしもつまづいたら、また戻ってくればいいと思う。

    けど、そうなる前に、一人でも多くの人に支えてもらえるように、

    理解してくれる人を一人でも増やしたいのだと、

    坪井さんは言う。

     

    「直接、利用者を支えることはできなくなっても、

    バトンを託した人が私たちを頼ってくれる環境を作ることで、

    間接的に支え続けることはできるから。

    利用者を地域に送り出す"地域移行”のため支援というのは、

    そういうことだと思うんです」

     

    利用者を見守り続けるためのネットワークを育てる。

    それは利用者をけして「一人にしない」で支え続けるということだ。

     

     

                          < 繋がるために|終 >

     

           次回  コラム|「障害」か「障がい」か。へ

     

     

    協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

     

    hihi wo oru

     

     

    JUGEMテーマ:社会福祉

    | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person1 | 07:55 | comments(0) | trackbacks(0) |
    繋がるために。Vol8|「日々を織る」
    0

       

      ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

       

      Person 1  坪井絵理子さん

       

      繋がるために。

       

      顱^貎佑凌佑板垢密に関わっていく。

      自分の常識は、自分の思い込み。

      辞めたいと思った時が、ほんとうのスタートラインだった。

      名前を覚えてもらうことから始めたリレーションシップ。

      至れり尽くせりは自立の妨げ 1/2

      至れり尽くせりは自立の妨げ 2/2

      外海に出る経験 1/2

      外海に出る経験 2/2

      地域と繋げる

       

       

      楽団の腕前がどれくらいなものかというと、

      熱心な練習の甲斐あって

      地域で行われる式典での演奏を依頼されるほどだ。

      そして、とうそうその活動が

      ホテルのディナーショーへの出演依頼にまで発展した。

      いくつかの音楽団が集まるショーへの、

      ワンツースリー楽団という音楽家たちとしての出演だった。

       

      「大阪の帝国ホテルのディナーショーだったんです。

      もう、嬉しくって。

      そんな、ホテルのディナーショーで演奏するなんて、

      一生に一度だって、ない人の方が多いでしょう」

      晴れの舞台での、皆の誇らしげな様子が目に浮かぶ。

      真剣に熱中してきたことが花開く経験は、

      くじけない力を育ててくれる。

      その経験について、坪井さんはこう続けた。

       

      「自分たちの演奏の出番以外は、

      宴会場のテーブルでディナーをいただいたんですけど。

      そっちでも皆、緊張しちゃって」

      ナイフとフォークを持って、

      固くなるジェスチャーを交える坪井さんの様子に、

      ちょっと戸惑いながらも、その場を楽しんでいた

      皆の雰囲気が伝わってくる。

       

      「いろんな人たちの中で、

      マナーを守って食事をするというのも、

      いい経験だったと思います」

      障がい者だからという言い訳はなしで、

      一人の大人としてマナーを守って行動するという経験の

      貴重さを坪井さんは語る。

       

      「地域の公のイベントとかにも、けっこう呼んでいただくんですが、

      私、お受けできる限りお受けするんです」

      坪井さんは、支援員として現場に立ち、

      職場のリーダーとして他のスタッフの面倒を見て、

      その上で、ワンツースリー楽団の指揮者を勤めている。

      「外の世界を体験する、またとないチャンスですから。」

       

      介護は必要最小限にとどめ、自立を促す。

      職員たちが、そう心がけてはいても、やはり施設の中は

      基本的に、皆が利用者のことを第一にする環境だ。

       

      「一演奏者として他の人たちの中に入れば、

      ほんとうに特別扱いをしてもらえませんから。

      自分たちの楽器は自分たちで、積み降ろしして、運ぶ。

      きちんと順番を待つ、じっと静かにしている。

      そういうことを、他の人たちと同じようにする。

      地域で生活を始めたら、それって

      当たり前にしなければならないことなんですよね」

       

      障がいのあるなしに特別な意味を持たせないフラットな環境で、

      自立して暮らしていく。

      その現場研修のように、坪井さんはワンツースリー楽団の

      メンバーと一緒に外の世界へと出ていくのだ。

       

       

                       次回  地域と繋げる。

       

       

      協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

       

      hihi wo oru

       

       

      JUGEMテーマ:社会福祉

      | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person1 | 07:51 | comments(0) | trackbacks(0) |
      繋がるために。Vol7|「日々を織る」
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        ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

         

        Person 1  坪井絵理子さん

         

        繋がるために。

         

        顱^貎佑凌佑板垢密に関わっていく。

        自分の常識は、自分の思い込み。

        辞めたいと思った時が、ほんとうのスタートラインだった。

        名前を覚えてもらうことから始めたリレーションシップ。

        至れり尽くせりは自立の妨げ 1/2

        至れり尽くせりは自立の妨げ 2/2

        外海に出る経験 1/2

        外海に出る経験 2/2

        地域と繋げる

         

         

        坪井さんの勤める施設に、

        見学や取材、会議への参加と何度か訪れた。

        その度に、廊下を歩いている私に利用者の皆さんが

        寄って来て、声をかけてくれた。

        趣味の時間に覚えたダンスの発表会のことや

        自由時間に熱中している手芸のこと、

        歯医者さんに歯磨きが上手と褒められたこと、と

        たいていは楽しかった話だ。

         

        そんな中、一人、まだ二十代とおぼしき利用者が、

        曇った顔で近づいて来た。

        「もうすぐ、出て行くの、わたし。

         施設から出ても大丈夫って、先生が言った」

        良かったね、という返事がいいのかどうか

        戸惑うような曇り顔だった。

        彼女の状況を知らないで

        うかつな言葉をかけるのもはばかられ、

        何か言いたげな彼女の方に耳を傾けるしかなかった。

        あちらの部屋、こちらの部屋から集まってくる人の賑わいに

        書き消されていった彼女の声は、たしかこう聞こえた。

        「ここに、おられへん」

         

        帰り支度をした背中越しに聞こえてくる笑い声に

        胸の奥があたたかくなって、

        そのあたたかさに浸っていてはいけないと自分に言い聞かせる

        坪井さんの言葉と対に思えた。

        この上なく安心して暮らせる場所は、

        いつか出ていくことで、そのほんとうの目的が果たされる場所。

        なんとも切ない気もちになった。

        けど、そんな感傷は何の役にも立たない。

        誰しもが、自分の世界を広げようと思えば、

        未知への恐れは克服しなければならない。

        利用者たちに、世界の広がりの可能性を提供するという願いを、

        優しさを装う感傷に埋もれさせてはいけない。

         

        坪井さんには、利用者たちと一緒に

        外の世界に出かけるためのクルーズ船がある。

        ワンツースリー楽団という音楽隊だ。

        音楽療法士を目指そうかと考えたこともある彼女は、

        楽団の指揮者を務めている。

         

        「皆、ほんとうに楽しそうなんです」

        楽団の話を坪井さんは生き生きと話し始めた。

        あるチャリティコンサートに、坪井さんと同席したことがある。

        私の席は、彼女の後ろだった。

        アップテンポの曲になると、坪井さんの体がスイングしはじめ、

        そして皆が手拍子を始めたころには、

        彼女は手だけでなく足でも軽くビートを刻んでいた。

        その後ろ姿を見ながら、

        坪井さんはほんとうに音楽が好きなんだなあと思ったのを覚えている。

         

        「私たち、ハンドベルの演奏をするんですけど、

        皆の息が合わなければ、曲にならないんです。

        だから自然と、練習は厳しくなるんですけど、

        皆、やる気満々で、楽しそうなんですよ」

        真剣だからこその楽しさが、皆を魅了しているのだろう。

        チャリティコンサートで、音楽に自分を委ね

        スイングしていた坪井さんの姿に、

        心を解放し、表現する音楽の素晴らしさを分かち合う

        楽団の練習風景を想像する。

         

         

                   次回  外海に出る経験 2/2

         

         

        協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

        hihi wo oru

         

        JUGEMテーマ:社会福祉

        | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person1 | 07:46 | comments(0) | trackbacks(0) |
        繋がるために。Vol6|「日々を織る」
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          ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

           

          Person 1  坪井絵理子さん

           

          繋がるために。

           

          顱^貎佑凌佑板垢密に関わっていく。

          自分の常識は、自分の思い込み。

          辞めたいと思った時が、ほんとうのスタートラインだった。

          名前を覚えてもらうことから始めたリレーションシップ。

          至れり尽くせりは自立の妨げ 1/2

          至れり尽くせりは自立の妨げ 2/2

          外海に出る経験 1/2

          外海に出る経験 2/2

          地域と繋げる

           

           

          揺りかごから墓場まで、そして心と体、生活の背景。

          生きるということの全方位と繋がっている福祉のなかで、

          坪井さんが従事しているのは、

          知的障がい、精神障がい、

          そして家庭内暴力などの家庭環境の不具合によって

          自立して暮らしていくことが難しい状況にある人たちの支援だ。

          だから、あくまでも施設は仮の住まいであって、

          最終的には、皆一人ひとりが施設を出て

          自分の暮らしの場に巣立っていくのが、まあ、理想だ。

           

          けど、人というもの、困っているのを目の当たりにすると

          ついつい手出しをしたくなる。

          たとえば、子どもがパジャマのボタンをかけようと

          目の前で、奮闘していると、

          最初は微笑ましく見ているのだけど、

          ボダンの位置が上がっていくにつれ

          小さな手がうまく動かないのを見かねて、手伝いたくなる。

          夕餉の支度にかかる時間が、昔よりずいぶん長くなったり、

          店屋のレジで財布を取り出し支払いするのに

          金額を聞き直したり、

          小銭を出すのに手間取るようになったりした

          母親に任せた用に、つい手出しをしたくなる。

           

          ほんとうは、自分でできることは自分でしてもらうことが

          望ましいのを分かるっているのに。

          時間がかかるからとか、

          見ていて危なっかしいからとか、

          出来上がりがいま一つうまくないからとか、

          よくよく考えれば、相手のことを思ってというよりも

          自分の気の満足のために

          手助けの名を借りた手出しをしたくなる。

           

          「必要最小限の介護で、自立を助ける。

           自分たちの仕事は介助ではなく、支援である」

           

          これは、そんな風に目の前のことに気をとられ

          自分たちのほんとうの仕事、

          もっと言えば使命を忘れないように、

          彼女たちが自分を律する言葉だ。

          「と言いながら、つい手伝いたくなるんですけど」

          と、坪井さんは自分を振り返る。

           

          自分でできることは自分で。

          それは、自分の部屋は自分で片付け、掃除するという

          身の回りのことを入り口に、

          自分の意思を伝えるということへ進んでいく。

           

          自分がどうして、どんな助けを必要としているのか。

          誰かが汲み取ってくれることを期待せず、

          自分にできる限りの方法で意思を伝えることが、

          坪井さんの言う、

          自分でできることは自分で、の一つのゴールである。

           

          「地域の中で自活するようになったらトラブルもあります」

           

          人が集まって生活すれば、当然そうなるだろう。

          ゴミの出し方が悪い、

          力まかせに布団を叩く音がうるさい、

          夜遅くに回す洗濯機の振動音が迷惑、

          はては物の言い方、挨拶の仕方がいけすかない…と、

          障がい者であろうがなかろうが、

          色々な人が集まって暮らすところには、

          トラブルがつきものと言ってもいいくらいだ。

           

          「そうなった時に、自分の意思を伝えられないと困るんです。

          トラブルを解決することはできなくても、

          せめて、そういう状況になるまでに何があったか。

          自分が、なんでそういうことをしたのかを伝えられないと」

           

          トラブルの原因、経緯が、相手の言い分だけで固まっていく。

          自分の身に置き替えて想像すれば、それはとても恐ろしい。

          たとえ自分に非があったとしても、

          その非についての自分なりの理由くらいは聞いてもらいたい。

          「だから、施設にいる間に、

          自分の意思を伝えることに慣れてもらわないといけないんです」

           

           

                         次回  外海に出る経験 1/2へ

           

           

          協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

          hihi wo oru

           

           

          JUGEMテーマ:社会福祉

          | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person1 | 07:55 | comments(0) | trackbacks(0) |
          繋がるために。Vol5|「日々を織る」
          0

             

            ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

             

            Person 1  坪井絵理子さん

             

            繋がるために。

             

            顱^貎佑凌佑板垢密に関わっていく。

            自分の常識は、自分の思い込み。

            辞めたいと思った時が、ほんとうのスタートラインだった。

            名前を覚えてもらうことから始めたリレーションシップ。

            至れり尽くせりは自立の妨げ 1/2

            至れり尽くせりは自立の妨げ 2/2

            外海に出る経験 1/2

            外海に出る経験 2/2

            地域と繋げる

             

            「利用者さんたちの笑顔があったから、

            あの時、辞めずにすんだんだと思います」

            毎朝が仕事の憂鬱との闘いだった頃を思い返して

            坪井さんは言った。

            「皆、優しいんです」

            坪井さんは、利用者たちを皆さんとは言わずに皆と呼ぶ。

            そこには、家族や友人を呼ぶような親愛の情がある。

             

            「たとえば…ついこの間も、

            入浴の介助の後、廊下を歩いていたら

            一人の利用者さんが、

            『坪井さん、坪井さん、これこれ』って、

            靴下を持って追いかけて来てくれたんですよ。

            『お風呂、しとったんやろ、靴下濡れてるで、

            そのままやったらアカンから、これに履き替え』って。

            新しいのを持って来てくれはったんです。

            『これ、きれいからな』って、

            わざわざ、新しいのを出して…」

             

            その時のことを思い出すように、少し間を置いて、

            言葉を繋いだ。

            「すごくね、見てくれてるんです。

            ほんとうは、こっちが皆のことに気を配って、

            いつも見ているものなのに。

            利用者の皆が、こっちを見てくれている。

            そして、気づかってくれるんです」

             

            お互いのことをちゃんと見て、気づかい、いたわり合う。

            その心の交流は、たしかに、

            友人であり、仲間であり、家族だ。

             

            「仕事が終わって、玄関で靴を履いていて、

            奥から皆の笑い声が聞こえて来た時、

            胸の奥が温かくなって

            すごく幸せな気分に満たされるんです。

            ああ、この仕事をしていて良かったなって」

            坪井さんにとって、この

            一日を仕事を終えて帰り支度を整え、

            施設の玄関で靴を履く背中に

            笑い声が流れてくるこの瞬間が、

            この仕事を選んでよかったと思う時だ。

             

            その瞬間を反芻しているかのような

            やわらいだ笑顔を浮かべた坪井さんとの間に、

            少しの間、心地のいい沈黙が流れた。

            白湯を飲んだように緩やかな温かさが

            体の内側でぽわっと広がっていくような

            その場の心地よさに、

            彼女が反芻している瞬間を想像する。

             

            「でもね」

            ちょうどよい湯加減の湯船から体を引き揚げるように

            背筋をすっと引き上げて、彼女は一気に話し始めた。

            「それではいけないんです。

            利用者の皆は、ここを出ていかないと。

            ずっとここで暮らしていてはいけないんです。

            ここに居た方が安心で、楽かもしれない。

            でも、それではダメなんです。

            私たちが、一番に願うことは、

            皆が自立して暮らしていくこと。

            だから、あの笑い声に満足していてはダメなんです」

             

             

                    次回 「至れり尽くせりは自立の妨げ 2/2」へ

             

             

            協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

            hihi wo oru

             

            JUGEMテーマ:社会福祉

            | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person1 | 07:56 | comments(0) | trackbacks(0) |
            繋がるために。Vol4|「日々を織る」
            0

               

              ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

               

              Person 1  坪井絵理子さん

               

              繋がるために。

               

              顱^貎佑凌佑板垢密に関わっていく。

              自分の常識は、自分の思い込み。

              辞めたいと思った時が、ほんとうのスタートラインだった。

              名前を覚えてもらうことから始めたリレーションシップ。

              至れり尽くせりは自立の妨げ 1/2

              至れり尽くせりは自立の妨げ 2/2

              外海に出る経験 1/2

              外海に出る経験 2/2

              地域と繋げる

               

               

              一人の人と長く密に接する仕事がしたい。

              それは即ち、

              一人の人と人間関係を築いていくということだ。

              お互いのことを少しずつ知り合い、信頼し、受け容れる。

              暮らしを支援するということは、

              相手の人生に大きく関わっていくことだ。

              信頼し、心の通う相手と日々を重ねられるかどうかで、

              施設で暮らす人たちの人生の質は自ずと異なってくる。

              それは、誰にとってもそうであるように。

               

              「まず、名前を覚えてもらうことから始めました」。

              坪井さんが、いくら利用者の名前を覚えて呼びかけても

              相手が坪井さんのことを認識していなければ、

              コミュニケーションは一方通行だ。

              眼鏡店での接客と同じ一過性の出来事が、

              昨日、今日、明日と、繰り返されていくに過ぎない。

               

              「どうしたらいいかなあと考えて、名札をつけました。

              “つぼいえりこ”って大きな字で書いて、

              よく見えるように、胸につけたんです。

              そしたらこっちから何も言わなくても利用者さんの方から、

              『”つぼいさんって言うの?』

              『”つぼいさん“って書いてある』って

              声に出して読んでくれて、自然に覚えてもらえました」

               

              施設の利用者の各個室の入り口には

              部屋の住人の好みや個性に合わせて

              職員が手作りした名札が掛けてある。

              その人の好きな色を使っていたり

              花が好きな人なら、花のイラストをあしらっていたり

              編み物が好きな人であれば毛糸を用いていたり。

              色も形も様々な名札には

              名前と一緒に、利用者さんの人となりを表す工夫があって、

              施設に漂う空気にあたたかさを滲ませている。

               

              「なかには、私の名札を見つけると

              自分のはこんなんや…と、見せてくれた人もいて、

              名前を覚えてもらうだけでなく、

              コミュニケーションのきっかけにもなりました」。

               

              そのうち覚えてもらえたらいいな…という

              流れにまかせた気楽なやり方で、

              いつの間にか、気づいてみたら

              後ろ姿に「つぼいさん」と呼びかけられるほど

              皆から名前を覚えてもらっていた。

               

              一緒に過ごす中で、

              お互いのことを少しずつ知り合い、覚え、

              時に、冗談や軽口を言い

              時に、遠慮をはずして要望を伝え

              時に、甘えをしりぞけ注意を口にして

              お互いに信頼を育てていく。

              そういうコミュニケーションが、

              名前を覚え、相手を認識するということと一緒に始まった。

               

                        次回 「至れり尽くせりは自立の妨げ 1/2」へ

               

               

              協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

               

              hihi wo oru

               

               

              JUGEMテーマ:社会福祉

              | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person1 | 07:11 | comments(0) | trackbacks(0) |
              繋がるために。Vol3|「日々を織る」
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                ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

                 

                Person 1  坪井絵理子さん

                 

                繋がるために。

                 

                顱^貎佑凌佑板垢密に関わっていく。

                自分の常識は、自分の思い込み。

                辞めたいと思った時が、ほんとうのスタートラインだった。

                名前を覚えてもらうことから始めたリレーションシップ。

                至れり尽くせりは自立の妨げ 1/2

                至れり尽くせりは自立の妨げ 2/2

                外海に出る経験 1/2

                外海に出る経験 2/2

                地域と繋げる

                 

                 

                何から何まで、すべてが新しいこと…というのは新鮮で楽しい。

                しかし何事においても、そんな状態は長く続かない。

                プロとしての責任を負う仕事ならなおさらのことだ。

                就きたかった職業であればあるほど、

                最初の嬉しさに続くのは

                きちんとできるようになるためのプレッシャーだ。

                内部に入って、その仕事の本質や課題が見えてくればくるほど、

                そのプレッシャーは大きくなる。

                 

                先輩から注意をされながら、1つ何かを覚えると、

                それにくっついて2つ、3つと新しい課題が生まれくる。

                仕事のことが分かるに連れて、

                坪井さんはどんどんプレッシャーを感じるようになった。

                「少し仕事に慣れて来た頃、

                毎朝、出勤するのが嫌で嫌で仕方なくなりました。

                ほんとうに、朝起きて、出勤するのが辛くて、辛くて」

                 

                手順や段取りを覚えたところで

                やっとスタートラインに着けた…というのが、

                仕事というものなのかもしれない。

                それは人の支援をする仕事もまた然りだ。

                 

                自分の都合や満足よりも、相手にとって望ましいことを優先する。

                先ず、望ましいことを想像する力、

                そのために、よりよい道筋を考える力、

                そして、その道を開いていく力。

                自分が選んだ仕事に必要な力が見えて来たこの時。

                 

                一人の人と長く密に接していきたいと飛び込んだ

                障がい者施設の支援員という仕事が

                どういうものであるかを分り始めたこの時が、

                坪井さんにとって、

                さあ、この仕事に就きますか?と問われた

                ほんとうの始まりのだったのかもしれない。

                 

                希望や憧れにも似た気もちで踏み込んだ福祉の現場で、

                プロとして働き続けるのか。

                毎朝、出勤を拒否する自分と闘いながら

                坪井さんが出した答えは、イエスだった。

                「負けず嫌いなんですよ、わたし」

                自分が選んだ道が、想像を越えて険しかった、

                だから引き返しますと、逃げたくなかった。

                「何もできないままで、辞めてなるものか…と」

                 

                ともかくも、行く。

                利用者たちが待っている現場に向かう。

                現場に入ってしまえば、四の五の言っている余裕などない。

                やるべきことをやる、求められることに応える、

                ただそれだけに気もちを向け、力を注ぐだけだった。

                そうして、自分を鼓舞するように続けることで、

                坪井さんはスランプを抜けた。

                 

                重い足を引きずるようにして向かった先には、

                「未熟なわたしを頼りにしてくれる人がいて、

                ともかく、一つひとつの仕事をきちんとやっているうちに、

                その日が終わって、1週間、1か月が過ぎて…」

                振り返ると、そこには充足感があった。

                必要とされる場に居続けるということで、

                坪井さんは、障がい者を支援する仕事の

                ほんとうのスタートを切った。

                 

                 

                            リレーションシップ。」へ

                 

                 

                 

                協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

                 

                hihi wo oru

                 

                 

                 

                JUGEMテーマ:社会福祉

                | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person1 | 07:49 | comments(0) | trackbacks(0) |
                繋がるために。Vol2|「日々を織る」
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                  ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

                   

                  Person 1  坪井絵理子さん

                   

                  繋がるために。

                   

                  顱^貎佑凌佑板垢密に関わっていく。

                  自分の常識は、自分の思い込み。

                  辞めたいと思った時が、ほんとうのスタートラインだった。

                  名前を覚えてもらうことから始めたリレーションシップ。

                  至れり尽くせりは自立の妨げ 1/2

                  至れり尽くせりは自立の妨げ 2/2

                  外海に出る経験 1/2

                  外海に出る経験 2/2

                  地域と繋げる

                   

                   

                   

                  「経験はもちろん、知識もゼロでのスタートでした。

                   毎日、毎日、エッ!? エエッ!? っていう、驚きの連続で」

                   十代の頃にたった一日、数時間、

                   お客さんとして過ごしたことがあるだけの福祉施設で

                   スタッフとして働き始めた頃を振り返って、坪井さんは笑う。

                  「ほんとうに、何でもない、ちょっとしたことが、

                   全部、自分の今までの、常識っていうか、当たり前とは違っていました」

                   

                  たとえば、ある日、こんなことがあった。

                   

                  坪井さんが玄関ホールで作業をしていた時、

                  2人連れで歩いていた利用者が、開いた自動ドアから出ていった。

                  気の合う友だちとおしゃべりしながら

                  表の空気を吸いにちょっと庭に出る、

                  坪井さんの目にはそれくらいの、日常生活の何でもない光景に映った。

                  そう受けとめて、自分の作業を続けていると、

                  「止めて! ぼんやり見過ごして、放っておいたらあかんでしょ」と、

                  それに気づいた先輩が、出ていく2人を施設の中に誘導した。

                   

                  「2人はね、目の前でドアが開いたから出て行ったんです」

                   別に庭に出たいとか、出ようとか思っていたわけではなく、

                  ただ、偶々、目の前でスーッとドアが開いたから

                  出て行こうとしていたのだった。

                  「先輩からそう教えられて、ほんとにびっくりしました。

                   目的があるとかじゃなく、ただドアが開いているから

                   ふわっと出ていくなんて、そんなこと思いもつかなくて」

                  坪井さんは、何の疑問も持たずに見過ごした。

                   

                  その場に、もし、その先輩が居合わせなかったら、

                  2人は、偶々外に出て、そのまま偶然の出来事に誘われながら

                  迷子になっていたかもしれない。

                  偶々、目の前で開いた自動扉から2人の利用者が外へ出た。

                  そのほんの些細な出来事は、どれだけの大事になっていたか分らない。

                   

                  「多種多様な、いろんな人がいるんだって、実感しました。

                   自分の常識というか普通だと思うことがすべてじゃなくて、

                   いろんな普通があるんだなあって。

                   私には意外でも、その人にとってはそれが普通なんだって」

                  人それぞれ、という言葉の意味を身を以て知った。

                   

                  目の前で起きることに対して、先入観を持たない。

                  目の前にいる人に対して、その瞬間のライブの対応をする。

                  一人の人と長く密に接したいと坪井さんが選んだ仕事は、

                  人との関係を結び、築いていくということは、

                  知識や経験を、

                  けして「それが当たり前という思い込み」に変えることなく、

                  柔らかに活かし続けていくということだった。

                   

                   

                              「辞めたいと思った時が、

                           ほんとうのスタートラインだった」へ

                   

                   

                  協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

                   

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                  JUGEMテーマ:社会福祉

                  | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person1 | 07:59 | comments(0) | trackbacks(0) |
                  繋がるために。Vol1|「日々を織る」
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                    ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

                     

                    Person 1  坪井絵理子さん

                     

                    繋がるために。

                     

                    顱^貎佑凌佑板垢密に関わっていく。

                    自分の常識は、自分の思い込み。

                    辞めたいと思った時が、ほんとうのスタートラインだった。

                    名前を覚えてもらうことから始めたリレーションシップ。

                    至れり尽くせりは自立の妨げ 1/2

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                    地域と繋げる

                     

                     

                     

                    「一人の人と長く接する仕事がしたかったんです」

                    障がい者を支援する福祉施設で働くと決めた理由を尋ねると、

                    彼女は短く楽しそうにそう答えた。

                     

                    彼女、坪井絵理子さんと出会ったのは2012年の秋。

                    インタビューのために訪れた彼女の職場は

                    大阪府の北に位置する山沿いの町にある施設で、

                    知的障がい、精神障がい、

                    そしてDVからの避難などを理由に、

                    女性たちが数十人、静かに過ごしていた。

                     

                    BBQができそうに広々としたウッドデッキに面した

                    ガラスのサッシドアから差し込む陽光に満たされた

                    リビングダイニングでテレビを見る人、まどろむ人。

                    長く伸びる廊下をゆっくりゆっくり散歩する人。

                    坪井さんを見つけると、呼び止めて話し始める人。

                     

                    秋の昼下がりの、

                    間延びした感じといってもいいくらいの緩やかな空気が

                    そこには流れていた。

                    利用者たちが気もちを乱すことなく過ごせるように、

                    その空気を保つためのスタッフの心配りを思った。

                     

                    「大学卒業後、眼鏡の量販店に就職して、

                    接客業を続ける中でその思いがどんどん強くなって、

                    一人の人と長く接する仕事って何だろうと考えてるうちに、

                    あ、福祉の仕事だ…と」。

                     

                    検眼、レンズとフレームの選択、受注手続き、

                    出来上がりの連絡、手渡し時の確認、

                    あれば使用感の確認のための再来店。

                    最初から最後まで自分が担当したとして、

                    眼鏡の販売で、一人の客と接するのはこの過程くらい。

                    2、3回顔を会わせる程度で、時間にすれば半日も共にしない。

                     

                    「物足りなくなったんです。

                    自分でも意外なくらい、接客業についてみて

                    自分は人と接することが好きなんだって気づいて…」

                    すれ違うような出会いでは物足りなくなり、

                    一人の人と長く密に付き合っていく、

                    福祉施設での支援員になろうと決めた。

                     

                    そう決心した坪井さんは、

                    高校生の頃に一度、コーラスグループのメンバーとして

                    施設訪問で訪れたこの「三恵園」を思い出した。

                    「私たちを迎えてくださった皆さんが、

                    なんかすごく温かくて、嬉しかったんです。

                    あそこで働けたらいいなあと思って、

                    ツテを頼って問い合わせたら、ご縁があって願いが叶いました」

                     

                    人と長く密に関わっていく仕事を考えた時、

                    福祉施設で働くという選択肢が

                    土を持ち上げ、むっくと起き上がる若芽のように

                    坪井さんの心に芽吹いたのは、

                    人が人を迎え入れるあたたかさに触れた

                    この十代の体験があったからかもしれない。

                     

                           髻惻分の常識は、自分の思い込み。』へ

                     

                     

                    協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

                     

                    hihi wo oru

                     

                     

                     

                    JUGEMテーマ:社会福祉

                     

                    | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person1 | 07:59 | comments(0) | trackbacks(0) |