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ぱんせどフランセ

思いつくまま、たまに仕事のことなども。

福祉の現場に生きる人たちへのインタビューをもとに書いた
ルポルタージュ「日々を織る」も連載しています。
居場所をつむぐ。vol.4|「日々を織る」
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    ☆「日々を織る」福祉の現場に生きる人たちのルポルタージュ☆

     

     

    Person 4   鈴木 貴子さん

     

    居場所をつむぐ。

     

      居場所のあること

      福祉の道へ 

      キャンプリーダーで鍛えた実践力 

      福祉を職業にすることへの躊躇 

      新聞社での日々 

      再び福祉の道へ、そして1995年1月17日 

      震災からの復興の町で 

      地域福祉の推進 

      もう一度、一個人としての福祉との関わり 

      高齢者福祉の世界へ 

    ⅺ   採用担当者として 

    ⅻ   働く環境を整える 

    xiii  人から人へ、受け入れられる安心

    xiv  人を育てる、職員へのケア  

    xv  尊敬心をもって接する 

    xvi  支援の仕事に見いだす喜びと感動

    xvii 困っている人がいない環境をつむいでいく

     

     

    社会福祉か政治経済か。

    希望していた両学部に合格し、

    社会福祉学科への進学を決めた鈴木さん。

    いざ、卒業を前にした時、

    就職活動は新聞社のみと決めた。

     

    当時、社会福祉学専攻の鈴木さんの

    就職先として待っていた分野は、

    行政か、福祉施設か、病院だった。

    行政と病院へは、関心が向かなかった。

    福祉の道に進むなら福祉施設だった。

    ただ、その時の鈴木さんには

    施設で直接支援の仕事に就く自信がなかった。

     

    「3年生の時、キャンプと実習で失敗をして、

     直接支援で人と関わっていく中で起こるだろう

     いろいろなことを受けとめ、飲み込んでいくには、

     自分の心は弱いと思ったんです」

     

    まず春のキャンプでのことだった。

    重度知的障害で癲癇(てんかん)発作のある子どもを

    グループカウンセラーとして担当していた。

    キャンプからの帰りに、

    バスが立ち寄ったサービスエリアで、

    鈴木さんが担当していた子どもが

    抑制が効かなくなった。

    「もうなす術がなくて」

    主催組織の職員の力を借りてなんとかその場が収まった。

     

    顔合わせ会の時に、アザができるくらい

    勢いよく噛まれていたので

    コミュニケーションにかなりの根気と注意を注いで

    一緒に過ごしてきたつもりだったが、

    人が行き交う賑やかな場所で落ち着きを失くした

    その子を前になす術がなかった。

     

    「キャンプで一緒に過ごしていた数日間、

     私はいったい何をしていたんだろうと泣けてきて」

    直接支援の難しさをしたたか思い知らされた。

    「情けなさというか、ふがいなさというか、

     力のなさというか。

     そういうものに圧しつぶされた感じでした」

     

     

    その体験に追い打ちをかける出来事が起こった。

    春のキャンプから半年も経たない8月半ば、

    社会福祉士実習の実習先に選んだ

    自閉症の人が生活する施設でのことだった。

    作業時間中に利用者の一人がパニックになり

    鈴木さんを叩くか押すかした。

    「わたし、泣いてしまって、

     1時間くらい実習の場に戻れなかったんです。

     自分の弱さが情けなくて…」

    鈴木さんは、直接支援への自信を喪失した。

     

    立て続けに起こったこの2つの事件。

    事件と言うと大袈裟に聞こえるかもしれないが、

    鈴木さんにとってはまさしく事件だった。

    キャンプと実習、

    どちらの当事者にも対応できなかった。

    どうしたらいいか分からず、

    それを受けとめることができなかった。

    受けとめることができず、

    なす術なく立ちすくんだり泣いたりする自分に

    ショックを受けた。

     

    この経験は、後々まで鈴木さんの心に影響を与え、

    大学卒業後の進路を考えた時、

    当事者と直接関わり支援していく仕事は

    自分には向いていないのではないかと

    感じるようになった。

    直接支援を仕事にするには自分は心が弱い。

    さらに自問自答が続いた。

    もし社会福祉士として相談援助の仕事につくとして、

    「こんな若ぞうの自分がいきなり

     人の人生の相談にのるなんて」と思い始めたのだった。

     

    小学校から高校まで

    エスカレート式のミッションスクールに通い、

    大学時代は勉強とボランティア活動に打ち込んだ。

    恵まれた生い立ちと言える自分が、

    社会での生活の経験もないままに、

    困っている人の心や境遇について

    ほんとうに想像力を働かせ、共感し、

    役立つことができるのだろうかという疑問が、

    真摯に考えれば考えるほど膨らんだ。

     

    そしてそんな疑問と一緒に、もう一つ、

    福祉施設で働くということへの違和感があった。

     

    「4年間、打ち込んできたキャンプは

    ボランティアだったんですよね。

    そのボランティアでしていたことが

    今度は仕事になるということに、

    すごく抵抗があって」

     

    当時は、福祉施設と地域との間に、

    今よりももっと、隔たりがあった。

    施設に入れば施設の中で暮らしていくという

    考えが今よりも強かった。

    地域から施設へと居場所を変えた人たちが

    生活をしている場。

     

    「どうしてそう思ったのか、

    どう言い表わすことができるのか、

    まだ分からないんですが、

    そういう、生活の場に入っていくことが

    ぴったり来なかった、あの時の自分には」

     

    鈴木さんがボランティアで打ち込んでいた

    キャンプは、障害児たちが、家庭や施設など、

    ともすれば閉じこもりがちな場所から、

    外の世界へと広がった場所だった。

    日常の生活から踏み出した非日常の場所で、

    人と出会い、新たな経験に出会い、

    それぞれの子どもが

    自分の可能性に気づいたり広げたりする場所だった。

    その開かれた場所で出会い接してきた人たちと、

    その反対側の場所で接していく。

    施設で働くということが、

    その時の鈴木さんの心には

    そんな風に映ったのではないだろうか。

     

    「学んできたことと思いが結びつかなかった…というか」

     

    なぜ、あの時の自分が

    福祉の世界に入ることを躊躇したのか。

    自分の心を覗き込み、探るように

    鈴木さんは言葉を続けた。

     

    「4年間の学びと結びついて、

    自分にできる仕事の分野は相談援助職。

    困っている人の相談にのったり、世話をしたり。

    でも、そういうことを自分ができるんだろうかと疑問でした」

     

    直接支援にも、相談業務にも、

    積極的に関わっていくだけの自信を持てず、

    しかも違和感を感じている。

    福祉の道は鬱蒼とした茂みの向こうに

    隠れてしまったようだった。

     

    鈴木さんはもう一つの希望だった

    新聞記者への道に進むことに決めた。

     

     

                        次回  新聞社での日々

     

     

    協力:社会福祉法人 白寿会

     

    コーディネート協力:社会福祉法人 産經新聞厚生文化事業団

     

     

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    JUGEMテーマ:社会福祉

    | ☆ルポルタージュ「日々を織る」Person4 | 07:40 | comments(0) | trackbacks(0) |